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武術家と現代職人が対峙したヒリヒリと緊張感漂う“真剣”対談

3/29(日) 11:00配信

Book Bang

 真剣での立ち合いを見るような、ヒリヒリと緊張感漂う対談である。

 一人は武術家甲野善紀。日本古来の武術を伝書と技の両面から独自に研究している。もう一人は土田昇。東京の三軒茶屋にある土田刃物店三代目店主で、明治から昭和にかけて活躍した不世出の道具鍛冶、千代鶴是秀作品の研究家。父、一郎が遺した多くの手道具を所持し是秀を研究する傍ら、木工手道具全般の目立て、研ぎ、すげ込みなどを行う。

 土田の著した千代鶴是秀のムック本に感動した甲野がこの対談企画を持ち込んだ。

 是秀は高名な刀鍛冶一族に生まれたが、明治9年の廃刀令以降、道具鍛冶となった。ノミ、鉋、切出、玄能、鋸と道具それぞれに名工がおり、それらの道具を使う名人大工と名人鍛冶の丁々発止のやりとりは胸が躍る。

 土田は是秀の死後に誕生しているため、本人との面識はない。しかし父親が語ったエピソードと、是秀と交流のあった多くの職人や鍛冶たちから話を聞き、彼らの作品と照らし合わせ、先達の工夫の積み重ねを残そうとしている。

 熟練した職人たちの動作や修業の過程は現代ではほとんど残されていないという。古くから使われてきた木材や原料自体手に入らなくなり、新しい建材に適応する道具に変わりつつある。だが道具を作る技術そのものが芸術のような職人の手業は、何らかの形で次代に継いでほしいと思うのだ。名工たちの伝説の数々は、それぞれが一つの物語になるほど濃くて興味深い。現代の人間国宝への厳しい評価など、思わず居住まいを正してしまうほどだ。

 本書はクラウドファンディングによって実現した。巻末には支援者の名前が刻まれている。本が読まれないこの時代に、本書を欲していた人がこれほどいたのだ。働き方改革が叫ばれるいま、「儲からないけど面白い」という職人気質をもつ若者が増えていくことを期待したい。

[レビュアー]東えりか(書評家・HONZ副代表)
千葉県生まれ。書評家。「小説すばる」「週刊新潮」「ミステリマガジン」「読売新聞」ほか各メディアで書評を担当。また、小説以外の優れた書籍を紹介するウェブサイト「HONZ」の副代表を務めている。

新潮社 週刊新潮 2020年3月26日花見月増大号 掲載

新潮社

最終更新:3/29(日) 11:00
Book Bang

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