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3.11の戦訓活かせぬ防衛省/自衛隊

3/30(月) 7:03配信

Japan In-depth

【まとめ】

・防衛省、自衛隊は国民を守ることより自己利益を優先。

・当事者意識と能力の欠如により、以前の教訓が生かされてず。

・自衛隊の当事者意識と能力の欠如を国民は知ることができず。

今年で東日本大震災発生から9年目を迎えた。震災の現場に投入された自衛官は多数に上り献身的に働いた。その一方で派遣に際しては多くの問題が露呈した。だが多くのメディアは健気に働く隊員を褒め称えるだけで、自衛隊の持つ欠陥を検証することはなかった。防衛省・自衛隊自身も問題点は無く、災害派遣は大成功だったと自画自賛している。

今後同様な大災害が起これば、自衛隊は同じような過ちを起こし、大きな禍根を残すだろう。それは人災だ。既にその後も熊本震災など大規模な災害が多数起こっているが、防衛省・自衛隊はまったく反省していない。

■ 通じない無線機

まず東日本大震災で問題だったのは陸自の無線機が通じなかったことだ。この問題は、筆者は震災前から度々指摘していた陸自の無線機が通じないし、数も定数を大幅に割っているので演習では隊員たちは自前の携帯で電話を使っていた。使わないと演習が成り立たないからだ。軍隊ではありえない話だ。同じ条件でも在日米軍の無線機は通じるのだ。

東日本大震災では携帯の基地局も壊滅状態だったので、無線機を使うしか無かった。だが無線機の数が定数に遥かに満たない上に、世代の違う無線機が混在しており、無線が通じない、混信が激しいといった事態が起こった。さらに根源的な問題はそもそも周波数帯が軍用無線に適していない周波数帯を割り当てられていることだ。これで現場は大混乱になっていた。

ところが陸自が震災後に採用されたNEC製の広域多目的無線機は周波数帯の見直しを行わないまま導入された。そして当然のように部隊では「通じない無線機」と評判が悪い。これを使わずに旧型の無線機を演習に使っている部隊もある。

これはいくつか理由がある。まず防衛省が国交省の折衝することが面倒くさいということだ。かつての内閣の外局に過ぎなかった防衛庁時代ならともかく、政策官庁に格上げされた防衛省なら、任務遂行に必要な法改正や他省庁との折衝を行ってしかるべきだが面倒くさい仕事から逃げている。

そして現在の周波数帯では外国製無線機が導入できないので、一種の非関税障壁となっているからだろう。つまり周波数帯をまともなものにすると、性能や価格の面で外国製と競合しなければならない。現状ならば低性能で高価格な国産品を売りつけることができ、メーカーに天下りも押し込める。

つまり防衛省は戦争で負けようが、国民がいくら死のうが、やるべき職務をサボり、国内メーカーの利権と天下り先の確保を優先していることになる。

同様に壁面透過レーダーも周波数帯の問題で外国製品が導入できず、それを理由にして技本(現防衛装備庁:当時、技術研究本部)が開発した。もっとも実際に開発したのは丸投げされたメーカーだ。だが、これまた低性能高価格で殆どまともに導入されていない。

同じ頃に開発した中国のメーカーは3D型やポッケット型、大型の車載型なども開発して人民解放軍に採用されている。更に民間型も開発されて世界に向けて輸出されている。周波数帯の問題を解決して、国産品と外国製品を競わせ、輸出まで視野に入れて勝算があるなら国内開発をしてもよかたが、非関税障壁を利用して新開発ごっこをやっただけで終わった。当然税金の無駄遣いだ。



■ お粗末な風呂、調理システム

野外の風呂も問題だ。自衛隊では風呂ばかりでシャワーは少ない。単位時間あたりの利用者数ではシャワーも絶対数が必要だ。特に夏場の被災地で、清潔を保つためにはこれが必要だ。野外洗濯システムも能力が低い。風呂は野外入浴セット2型、洗濯システムは野外洗濯セット2型だが、両方とも設置に時間がかかる。

対して諸外国ではより、迅速に展開でき効率も高い、コンテナ式のものを採用している。我が国からODA(政府開発援助)を受けているトルコですら、これらの装備を開発、装備している。

野戦調理システムも陸自では牽引型で中隊向けの野外炊具1,2号があるが、牽引式で能力が低い。諸外国で採用されている、より大きな能力があって、悪天候で使えるコンテナ式のキッチンも、同様にコンテナ式の食堂もない。これまた途上国でももっている装備だ。

よくネトウヨの類が、災害派遣で自衛隊は避難民に温かい食事を提供する反面、自衛官は冷たい飯しか食べられないことを「健気な我が将兵」と「美談」にしたり、それができないのは温かい食事をとると左翼から攻撃されるからだと主張しているが、全くの嘘だ。単に自衛隊の兵站能力が低いだけの話なのだ。

そんなに「左翼」の言動に影響力があるならば辺野古の埋め立ても、オスプレイの導入も中止になっていたはずだ。ひたすら防衛省や自衛隊の現状を肯定することが国益だ、自衛隊のためだと信じているようだが、こういう輩こそが自衛隊の改革を阻み、現場で働いている隊員の敵である。無能で働き者の味方は敵よりも始末が悪いというが、その好といえるだろう。



■ 無人機先進国、今は昔

かつて我が国は無人機の先進国だったが、いまはその影がない。自衛隊も無人機の導入、運用では途上国以下のレベルである。これが厳然たる事実である。

これは筆者がスクープしたことだが、陸自が運用していた数少ない無人機のFFOS(Flying Forward Observation System:遠隔操縦観測システム)、FFRS(Flying Forward Reconnaissance System:新無人偵察機システム)は東日本大震災において全く使用されなかった。

これは後に防衛省が国会答弁でも信頼性が低かったので二次災害を恐れて使用しなったと認めている。因みに防衛省のホームページに掲載さいれている事業評価でFFRSは「大規模災害とNBC(Nuclear/核兵器、Biological/生物兵器、Chemical/化学兵器)環境における偵察に必要であり、開発は大成功だった」と自画自賛していた。

それでも国会答弁ではFFRSは導入から1年も経っていないからと言い訳をしていたが、FFOSは既に長く運用されていた。またFFRSはその後の熊本の震災などの災害でも使用されていない。つまりは自衛隊が開発した国産の無人機は信頼性が低すぎて実用に耐えなかったということだ。ところが防衛省はそのことをきちんと総括して公表せずに、こっそりとFFOSとFFRSの調達を停止している。開発と調達に数百億円もかけた装備が単なる税金の無駄使いに終わり、その報告も納税者にしていないのだ。

これらが使いものにならなかったのでことが露呈したので、代わりの無人機が導入されることになって急遽、ボーイング社のスキャンイーグルとフジインバック社のB型という固定翼のUAVのサンプルが調達された。だがスキャンイーグルが選定されて、部隊用の予算がついたのが来年度予算からで、戦力化は更に先になるだろう。つまり震災から10年経って、震災の教訓を活かして代用手段を獲得する努力をしてこなかったこの間に大規模な災害がおこれば同じ轍を踏むことになったはずだ。防衛省、自衛隊には当事者意識と能力が欠如している。

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最終更新:3/31(火) 14:10
Japan In-depth

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