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五輪で「原発被災からの復興」を装う安倍首相 「常磐線で聖火」の裏側

3/30(月) 12:31配信

週刊金曜日

 東日本大震災の発生から9年になるのを前に政府は3月4日、東京電力福島第一原発事故に伴い福島県双葉町の全域に出ている避難指示を、JR東日本の常磐線双葉駅周辺の帰還困難区域など一部で解除した。翌5日には同線の大野駅を含む大熊町の一部地域でも避難指示を解除。だが第一原発から約5キロメートルの大野駅前に人影はない。実態は駅を金網で囲い、駅前商店街や住宅をバリケードで封鎖して回廊のような輸送道路を確保しただけだ。10日には富岡町の夜ノ森駅周辺も避難指示が一部解除され、常磐線は14日に浪江~富岡間が運転を再開する。

【試運転列車に高濃度の放射能】

 だが除染したとはいえ福島第一原発から10キロメートル圏内にある浜通りの放射線量は高い。双葉駅付近のモニタリングポストは毎時0・47マイクロシーベルトを指していた。大野駅付近では同1・67マイクロシーベルト。だが福島県は「26日に予定する聖火リレーの開催に問題はない」としている。

 一方、常磐線全線開通に向けたJRの試運転で「帰還困難区域を通過した車両に付着したちりの放射能濃度が、通常より高い」と動労水戸が明らかにした。調査した試運転車両は1月18~22日の5日間運行。車両床下にモーターを覆うフィルターが取り付けられていて、外気を取り込む際にちりなどを吸収する。

 動労水戸はこのフィルターからちりを採取、市民団体「つくば市民放射能測定所」に測定を依頼した。その結果、1キロ当たり2350ベクレルのセシウム137が検出された。これは汚染されていない通常運行の車両より23倍も高いという。同労組の石井真一副委員長は「このような危険な路線でオリンピックを口実に被ばくと帰還を強制することが『本当の復興』なのでしょうか」と批判する。

【災害を逆手にとった巨大利権】

 双葉駅から国道6号線を横切り太平洋側の産業拠点になった広大な両竹、中浜地区に向かった。地盤沈下した湿地帯には重機が土砂を落とし、完成した区画には大型トラックが砂塵を上げ、列をなしていた。付近ではすでに準備が進み、白い巨大なテントを張ったビルのような施設も点在。中間貯蔵施設を請け負う建設関連企業17社の進出が決まっている。

 コロナ禍で超多忙な安倍晋三首相も6日夜に富岡町に宿泊。7日朝には試運転列車に乗車し富岡駅から双葉駅に移動した。訪問の主目的は常磐自動車道・常磐双葉ICの開通式への出席と浪江町に開所した水素製造拠点の視察だ。

 ここで安倍首相は福島水素エネルギー研究フィールド開所式で水素を使った燃料電池車に試乗。「再生可能エネルギーから水素を生み出す世界最大の施設が稼働します。製造されるクリーンな水素は年間200トン。原発事故で大きな被害を受けた福島から未来の水素社会に向けた新しいページが今まさに開かれようとしています」と述べた。さらに「26日にはここ福島から2020年聖火リレーがスタート。その火を灯すのはこの場所で生まれた水素です。五輪・パラリンピックの大会期間中、自動車やバスが水素で走り、選手村では水素を活用した電気が利用されます」と五輪開催のプレゼンで約束した、原発事故が自らのコントロール下にあることを強調。得意満面だ。

 首相の福島訪問は20回に及ぶが、背景にあるのは経済産業省が推進する国際研究産業都市構想という災害を逆手にとった廃炉処理、新エネルギー開発などの巨大利権。その予算規模は青天井だ。

(新藤健一・フォトジャーナリスト、2020年3月13日号)

最終更新:3/30(月) 12:33
週刊金曜日

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