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概略が示された大型経済対策の評価

3/30(月) 9:22配信

NRI研究員の時事解説

最初に規模ありきの姿勢は問題だが

3月28日の記者会見で安倍首相は、「リーマン・ショックを上回るかつてない規模」の大型経済対策を、10日程度で策定する考えを明らかにした。

2008年のリーマン・ショック(グローバル金融危機)の際には、財政支出15.4兆円、事業規模56.8兆円の経済対策が実施された。昨年12月に政府は事業規模26兆円の経済対策を閣議決定し、それは2019年度補正予算と2020年度当初予算に既に盛り込まれた。これを含めた事業総額をリーマン・ショック時の経済対策を上回るようにするためには、新たに事業規模30兆円超の経済対策を策定することが必要となる。

新型コロナウイルスが終息しない限り、急激な経済の悪化は続き、それがどの程度の期間続くのかはまだ分からない。経済対策は刻一刻変化する情勢を見ながら柔軟に、そして段階的に打ち出していくことが望ましいように思える。この点から、経済対策の策定に際して、「最初に規模ありき」の考え方にはやや疑問を感じる。

ただし、野党でも「リーマン・ショックを上回るかつてない規模」の大型経済対策をこぞって主張しており、既に流れは決まった感がある。

新型コロナウイルス問題によって、将来の日本経済の発展に貢献する中小・零細企業やその労働者、あるいはフリーランスの事業・生活基盤が失われ、日本経済の大きな損失とならないようにすることが重要だ。そして、新型コロナウイルスの問題が解消された際には、日本経済が従来の活動を早期に取り戻すことができるよう、そうした経済の基盤、いわゆるサプライサイド(供給側)をしっかりと支えることこそが、経済対策の基本的な理念ではないかと思われる。

消費税率引き下げと国民一律の給付見送りは評価

ところで、今回安倍首相が打ち出した経済対策の方針については、評価したい点も少なくなかった。その第1は、野党が主張する消費税率の引き下げ策が、方針に含まれなかったことだ。仮に一時的措置と位置付けたとしても、ひとたび消費税率を引き下げれば、再び元に戻すことは極めて困難となる。この場合、恒久的な歳入の相応部分を失ってしまい、日本の財政環境は劇的に悪化することになる。そのもとで、社会保障支出などをどのように賄っていけば良いのか。経済が危機状態にあるからと言って、財政の基盤、社会の基盤を壊してしまって良いはずはない。

第2の評価点は、個人への現金給付について、国民すべてに対する一律の給付ではなく、所得減少世帯に限定する考えを首相が示したことだ。

給付は新型コロナウイルス問題で生活基盤が傷ついた、いわゆる困っている人を対象とするセーフティーネット強化策の一環であるべきだ。日本の財政に制約がある中では、本当に必要とする人に集中的に資源を投入すべきだろう。また、生活に余裕がある人が仮に給付金を受け取っても、それを消費に回す割合はかなり小さく、消費刺激効果も限定的だ。セーフティーネットと景気刺激の2つの観点から、一律の給付は効率性の良くない施策と言えるだろう。

第3は、中小企業向けに、新たな給付制度を創設する考えが示されたことだ。新型コロナウイルスの緊急対策の第1弾、第2弾では、中小企業向けの支援は、政府系金融機関を活用した融資支援が中心だった。いわゆる資金繰りに行き詰って企業が破綻をすることを回避させる施策だ。

しかし、インバウンド需要の急激な落ち込みやイベント・外出自粛要請によって売り上げが大きく減少している中小・零細企業が、いかに低金利あるいは無利子であっても、借金をさらに増やすことには慎重であり、自ら廃業の道を選んでしまう可能性もあるだろう。それを回避するためには、休業補償のような形で財政資金を投入する必要があるのではないか。

また、非正規社員も含む形で雇用調整助成金の拡充策が今回示されたことは、労働者支援の観点から妥当だろう。

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最終更新:4/1(水) 8:42
NRI研究員の時事解説

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