ここから本文です

「経済ファースト、コロナセカンド」大丈夫なのか?トランプの危機管理力

3/30(月) 12:25配信

Wedge

 今回のテーマは、「トランプの危機管理能力」です。米国の新型コロナウイルス感染者数は10万人(3月28日現在)を超え、急激な増加に歯止めがかからない状況が続いています。死者数も1500人に達しました。

 このような危機的状況にもかかわらず、ドナルド・トランプ大統領は能力を疑いたくなるような言動をとっています。そこで本稿では、トランプ大統領の危機管理能力を中心に述べます。

「復活祭」の謎

 トランプ大統領は3月25日、ホワイトハウスでの記者会見で「復活祭の祝日(今年は4月12日)までに経済を再開したい」と述べました。マイク・ペンス副大統領が率いる新型コロナウイルスに対応するタスクフォースが打ち出した「感染拡大のスピードを遅らせる15日間のガイドライン(行動指針)」を、復活祭までに緩和する考えを表明したのです。トランプ氏は、「人々の生活を通常の状態に戻したい」と主張しました。

 ガイドラインには10人以上の集まりは避ける、バーやレストランでの飲食は控える、旅行は自粛するなどの具体的な行動指針が含まれています。

 トランプ大統領は「復活祭は特別な日であり、(礼拝の信者で)教会が満員になって欲しい」と語り、教会を再開して礼拝ができるようにしたいとも語りました。

 トランプ氏の上の発言には、少なくとも3つの注目点があります。

 第1に、期限の設定です。これは何を意味しているのでしょうか。

 トランプ大統領は、これまでに期限設定に否定的な考えを示してきました。特に、交渉では期限を設けると自分の立場を弱くするからです。

 にもかかわらず、そのトランプ大統領がコロナ感染拡大の最中に、19日間で経済再開に踏み切るという非現実的な期限を設けました。その背景には、株価暴落と経済停滞でかなり焦りがあるとみて間違いありません。トランプ氏の最大の強みであった経済と失業率の低さが、一気に弱みに変わってしまう公算が高まったからです。

 第2に、コア(核となる)支持者を意識したメッセージです。新型コロナウイルス感染拡大のために、大規模集会を開催できないトランプ大統領は、どのようにして支持者に対してメッセージを届けるのか、対応に苦慮しています。

 前回は「中国ウイルス」発言により、「中国嫌い」の支持者の熱意を高めました。今回は、復活祭の祝日の重要性を強調し、支持基盤の一角を成すキリスト教福音派にメッセージを送ったと捉えることができます。

 加えて復活祭の強調は、ネット上で陰謀論を流布し、トランプ大統領を擁護する謎の人物「Q アノン」の信者に対するメッセージでもあります。筆者がトランプ集会に参加すると、ある白人女性のQアノンの信者がホワイトハウスで行われた復活祭のお祝いで登場するウサギについて熱く語っていました。ウサギがほら穴を抜けて、人々を虚偽から真実の世界へ導いてくれると信じているからです。

 しかも、トランプ大統領は過去にホワイトハウスでの復活祭のお祝いで、Qアノンの言葉を使用したことがあります。上の白人女性の信者は復活祭の祝日におけるトランプ氏の発言にも注目していました。

 つまり、復活祭はトランプ大統領の支持基盤であるキリスト教福音派及びQアノンの信者にとって、極めて重要な祝日になります。念のため、筆者はQアノンの信者ではありません。

「経済ファースト、コロナセカンド」
 第3に、方針転換です。前述したガイドラインの柱になっているソーシャル・ディスタンス(他人との距離を充分とること)に関して、方針転換に踏み切る可能性が高まってきました。おそらくトランプ大統領は、この感染抑止のガイドラインが経済の停滞を招き、再選に対する阻害要因に成りかねないと判断したのでしょう。

 米ワシントン・ポスト紙はトランプ大統領の方針転換に関して、同大統領は感染症専門医の助言ではなく、経済界の声に耳を傾けるようになったと報道しています。経済界に接近し、感染症専門医との距離を開け始めたのです。

 ということは、トランプ大統領は「経済ファースト、コロナセカンド」の道を選択したといえます。言い換えれば、コロナ対策よりも、再選のための選挙対策を優先しました。

1/2ページ

最終更新:3/30(月) 12:25
Wedge

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事