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健診前の禁酒・禁煙・運動…それ、「無駄な努力」かもしれません

3/31(火) 7:02配信

FRIDAY

健診不要論を唱える医師も

会社が新年度を迎える4月。「ああ、今年もまた健診の時期が来た」と、慌ててジムに通ったり禁酒禁煙に勤しんで、少しでも数値をよくしようと奮闘する人も多いのではないだろうか。直前にそんなことをして、果たして診断の結果に違いは出るのか? そもそも、平常時の健康状態をチェックするための健診で、ズルする意味があるのだろうか。しかも最近は健診不要論を唱える医師も多いという。

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そこで、かねてから健康診断に疑義を唱えている近藤誠先生に、健診に関する疑問を聞いてみた。医療界の重鎮でありながらバリバリの風雲児。怖い人だったらどうしよう…。なんて思いながら訪ねると、先生は立川談志ばりのフランクさでお話ししてくれたのだった。

“直前のズル”、ほとんど効果なし!

まずは健診直前の生活習慣見直しについて。このズルは、診断の結果に影響するのかどうかを聞いてみると…。

「こういう人、いるよね。1週間前から節制したのでは、ほとんど何も変わらないよ。ただ、短い期間でも禁酒すると肝臓のGTPはけっこう下がるんだ。で、ひと月くらい前から節食すると、体重は少し落ちるかな。

だけどそんなことしても意味がないというか。例えば、やや太り気味でメタボだと言われてる人は、BMI25以下に落とそうと節食したりするけど、そもそも25以下という基準が大問題でね。男性の場合、30以上あるとちょっとまずいけど、25以上のほうが、かえって死亡率が低いんですよ」(近藤誠先生 以下同)

欧米ではBMI30以上が肥満となっている。ではなぜ日本では、BMI25が基準値なのか。

「欧米に同調して30以上にすると、日本に肥満の人は3%しかいなくなっちゃうわけ。ところが25~27やそれ以上の人は30%ぐらいいる。これを“肥満だ! 病院に行け!”と脅すとね、見つけなくてもいい病気がいろいろ見つかるんだよ。これは肥満患者というレッテルを貼って病院に足を向けさせようとする陰謀なんだよ」

このBMI値のグラフを見ると「基準値って一体ナニ!?」という疑問が沸き起こる。そういえば血圧にしても、昔は「上が180以上なら病院に」などと言われていたのに降圧目標値はどんどん下がり、一昨年までは「140/90」だったのが、去年から「130/80」に、また下がった。

「いちばんバカバカしいのは血糖値の基準でね、昔は140だったのが、あるとき突然、126に変わった。なぜ126かというと、1割減らすと126なんだ。値を下げるとお客(患者)が集まる。バーゲンみたいなもんだ(笑)」

◆健康診断の“基準値”は、どう決められているのか?

近藤先生は、「健診で使われる生活習慣病の基準値の決め方に問題あり」と指摘する。

例えば肝機能や白血球数などの基準は、1000人、1万人の“健康な人”を集め、その検査値をグラフ化して、もっとも低い方と高い方の2.5%をそれぞれ切り、釣り鐘状の残り95%から基準値を求める。これは、数値が低いか高いかの目安にはなるが、そもそも、“健康な人”を対象に調べた結果なので、基準値を外れたとしても、 “イコール病気”ということにはならないとのこと。

ちなみに筆者はお酒がまったく飲めないのに毎年肝機能検査のγ-GTP値に「H」がつき、ビクついている。けれど「毎回同じというのは当たり前。それはあなたの個性なんだから。健康な人のデータに基づいて基準値を決めているんだから、病気ではないけど値が高く出る2.5%に入っちゃう人もいるわけだ」と説明されて、心底ホッとした。

基準値とはそもそもそういうものなのに、高血圧、高血糖、コレステロールなどの生活習慣病にいたっては、統計学的な決め方はされていないという。

「専門家たちが集まって、勝手に“00以上はおかしい”と決めてるんだな。そうすると年寄りの血圧なんて7割が異常値になって、薬を飲まされちゃうわけ。結果、病院も製薬会社も儲かる。“基準値決定権”という打ち出の小槌を握ってる格好なんだよ」

認知症や、さらには脳梗塞のリスクを高めるとも言われる降圧剤。基準値の切り下げで、降圧剤の売上げが年間1兆円超えになったと聞くと、“基準値ビジネス”の闇が見えてくる。

◆健康診断が義務づけられているのは、日本だけ!?

基準値はあてにならず、さらに薬づけにされるリスクを考えると、毎年の健診の意味がわからなくなってくる。そもそも年に一度の健康診断を実施しているのは日本だけ。なぜ諸外国は健診をしないのだろうか。

「欧米では健診の比較試験というのを山ほどやってる。その結果“やってもやらなくても全然変わらないか、かえって危ないよ”っていうのがわかったわけだ。この比較試験というのが大事なんだよ。比べないと何もわかんないし、あらゆる人がいろんなことを言う状況を許すことになる」

例えばフィンランドでは、生活習慣病になりやすい危険因子をもつ40~55歳の男性1200人を選び出して2班に分け、片方は“放置群”(本人の自由にさせておく)、片方は“医療介入群”(医者が生活習慣の変更をこまめに指示)として15年間にわたり、全員の生死を調査するという比較試験を行った。その結果、総死亡数は放置群が46人、医療介入群が67人という結果が出てしまったのだ。

「研究者たちの意図に反して悪い結果が出たものは、大抵信用していいんだよ。わざわざ悪い結果を出そうとしてインチキする人はいないからね。日本の行政もこの報告は知ってるはずなのに、健診を推進している。そもそも日本人っていうのは世界一長寿でね、みんな健康なもんだから、野放しにしておくと患者が病院に来ない。それを“自分は病人なんだ”と自覚させる手段が健康診断なんだよ」

◆自分の身体の声を聞き、具合が悪くなったら病院へ。当たり前の生き方が健康の秘訣

ウ~ン、健診受けたくない。とはいっても職場健診からは逃げられない。一体どうすれば…。

「身長体重とか血圧以外は、血液検査と胸部レントゲンだけ受けとけば、とりあえず会社側や厚生労働省は満足するから、それだけ受けるのが一法。さらには“胸部レントゲンは放射線被ばくによる発がんが怖い”と言えば、会社側は無理押しできない。また、血液検査のなかにオプションで前立腺のPSA検査が入っていないのを確認すること。高いと “癌じゃないか?”みたいな話になるから。

再検査しろと言われても、行かない方がいいよ。放っておいても死んだりしないから。例えば60歳以上の人だと、前立腺に潜在癌というのが半数に見つかる。でもほとんどはそのままで、悪さはしない。ヘタに切ったりすると、癌が暴れ出して大変なことになる」

しかし、もしも健康診断を受けなかったとしたら、どうやって健康管理をすればいいのか。

「自分が元気でご飯もおいしいと思うなら、本来ならやるべき検査はないよ。たしかに、“不安”というのは理屈抜きだから、健康診断で身体の状態を確かめたくなるかもしれない。けれど大切なのは“自分の身体の声”を聞くこと。具合が悪くなったら医療を受ければいい。

やるべきことは、早寝早起き、バランスのとれた食事。あとは適度な運動。少し早足で歩くだけでいいんだよ。僕の家には体重計も血圧計もないよ」

近藤先生の日常は18時に就寝し、起きるのは2時!「それで犬の散歩なんかして、4時には仕事場に来る。今日もするべき仕事は終わってるわけ」。ちなみに現在15時半。あと2時間半で、先生はおやすみタイムだ!

結局、健診前のズルは意味がない。生活習慣病というくらいだから、自分のリズムを知り、生活習慣を整えるのが健診より何より大事だということだ。

近藤誠(こんどう・まこと) 近藤誠がん研究所所長。1983年より慶應義塾大学医学部放射線科講師を務める。乳房温存療法のパイオニアとして知られる。医療界にさまざまな提言を行い、2012年には第60回菊池寛賞を受賞。2014年、慶應義塾大学医学部を定年退職。2013年、近藤誠がん研究所 セカンドオピニオン外来を開設。『健康診断は受けてはいけない』、『がん放置療法のすすめ 患者150人の証言』(ともに文春新書)など著書多数。『「延命効果」「生活の質」で選ぶ「がん・部位別」治療事典』(講談社)を4月に刊行予定。

取材・文:井出千昌

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最終更新:3/31(火) 10:15
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