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企業支援に手厚い米国経済対策の弱点は何か

3/31(火) 7:47配信

NRI研究員の時事解説

新型コロナウイルス対策の被害者である企業の救済

3月27日に米議会では、2.14兆ドルの大型経済対策が可決された。2008年のリーマン・ショック後に実施された、不良資産救済プログラム(TARP)などの経済対策パッケージと比較した場合、今回の経済対策の大きな特徴となるのは、(非金融)企業の救済色が非常に強いことだ。リーマン・ショック後は、銀行救済が中心だった。

リーマン・ブラザーズが破綻したのは2008年9月15日、TARPが成立したのは、それから1か月後の同年10月14日だった。この間、1か月もの時間を費やしたのは、経済危機を引き起こした最大の責任者である金融機関を国民のお金を使って救済することに反対する意見が、議会内で強かったためだ。利益を上げるために過剰な融資や投資を実施し、その失敗によって自らが破綻の危機に直面した銀行などの金融機関を救済することに、議会には強い抵抗があったのである。

ところが今回は、新型コロナウイルスの感染抑制のために政府が決めた出入国規制措置や、外出自粛要請などによって、いわば何の落ち度もない企業の経営やその労働者の雇用が脅かされているのが現状だ。そうした企業と個人を救済するという点において、民主、共和両党ともに異論がなかったということが、より迅速な経済対策の可決につながったと言える。

企業に対して非常に手厚い支援

総額2.14兆ドルの大型経済対策のうち、2,500億ドルは失業保険給付の支援、3,010億ドルは個人への現金給付に使われる。さらに注目されるのは、3,490億ドルが、中小企業(従業員500人未満)向けの融資に使われることだ。この融資は、企業が雇用や賃金を維持する際には返済しなくてよいという条件の融資(forgivable loans)である。事実上の中小企業への給付金であり、日本の雇用調整助成金制度に似ている。

そして、4,250億ドルが、最大4兆ドル規模の米連邦準備制度理事会(FRB)による企業支援スキームに対する政府保証に用いられる。この4兆ドルは、(非金融)企業の債務総額の約4分の1にも相当する規模だ。

このスキームのもとでは、FRBが投資目的事業体に融資をし、それがCP、社債、地方債の購入、MMF融資を実施する。さらに、企業向けの融資も行われるのである。

2008年のリーマン・ショックの際にも、FRBはCPの買入れを行ったが、社債、地方債の購入は実施しなかった。企業に直接融資を行うのも、今回が初めてのことである。

CP、社債の買入れは、欧州中央銀行(ECB)や日本銀行も実施している。さらに、日本銀行はETF(株式)も買入れ対象としている。しかし、融資の対象は金融機関に限られる。中央銀行は本来、銀行の銀行なのである。

この点から、FRBが、特別目的事業体を経由してではあるが、企業に直接融資を行うことはかなり異例のことだ。それほどまでに、企業支援に手厚い経済対策なのである。

最大4兆ドルの企業支援スキームの中で、政府は最大4,250億ドルの出資を投資目的事業体に実施する。これは、仮にFRBの4兆ドルの融資の一部に焦げ付きが生じても、10%強までであればFRBに損失が生じないことを意味している。

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最終更新:3/31(火) 8:13
NRI研究員の時事解説

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