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超秀作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の恐るべき“脚本力”<ザテレビジョンシネマ部>

3/31(火) 7:00配信

ザテレビジョン

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019)』(4月4日(土)よる8:00 WOWOWシネマほか)は、現時点でのMCU最新作。トム・ホランドが主演する「スパイダーマン」シリーズの第2作であり、全世界興行収入歴代第1位に輝く『アベンジャーズ/エンドゲーム(2019)』(4月11日[土]午前4:00 WOWOWシネマほか)のエピローグでもある。劇場公開時には、その衝撃的な内容と見事なストーリー展開が大いに話題となった。

【写真を見る】主人公ピーターは異世界から来たというヒーロー・ミステリオと共闘するが...

中でも多くのファンを感動させたのは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』である事件に巻き込まれたアイアンマン/トニー・スターク(ロバート・ダウニー・ジュニア)とスパイダーマン/ピーター・パーカー(トム・ホランド)の絆の終焉。

師匠に起こった事件を乗り越えて“真のヒーロー”へと成長していくピーターの姿を描き、本作は傷つきながらも戦い続ける“親愛なる隣人”「スパイダーマン」の本流へと立ち返ったといえよう。

今回は、そんな『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の魅力を、ネタバレなし(作品の構造上、非常に困難を極めるのだが…)でご紹介する。

まずは、簡単なあらすじから。『アベンジャーズ/エンドゲーム』のトラウマを引きずったまま、ヒーロー活動を続けるピーター。しかし、“次期アイアンマン”の重圧に耐えかねてヒーローをいったん休業し、高校の行事であるヨーロッパ旅行に向かう。

しかしそこに、4体の怪物“エレメンタルズ”が出現。ピーターは、異世界から来たというヒーロー、ミステリオ(ジェイク・ギレンホール)と共闘していくのだが…。

アメリカ、イタリア、イギリスなど世界各国を舞台にしたスケール感、ピーターの新技や新たなガジェット、軽快でアクロバティックなアクション、同級生とのもどかしい恋路を描く青春恋愛ドラマなど前作『スパイダーマン:ホームカミング(2017)』(4月4日[土]午後5:45 WOWOWシネマほか)から進化した点は数多いが、やはり『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の最大の面白さは、観れば観るほど深みが増す秀逸なストーリーにあるだろう。

本作の軸となるのは、アイアンマンというあまりにも偉大な存在がいなくなった世界で、スパイダーマンがどう自己のアイデンティティを見いだしていくのか――という部分。そのテーマを描くために、序盤からピーターには“試練”が畳み掛ける。

マスコミからは“次世代のヒーロー”の過度な期待をかけられ、現実逃避で行った旅行先では、至る所でアイアンマンへのメッセージを目にするのだ。さらに、トニーがピーターに宛てた“メッセージ”と“アイテム”、アイアンマンと似た雰囲気を持ったミステリオの存在が、ピーターを“幻影”で包み、悩ませていく。

アイアンマンとは違い、世間に正体を明かしてはいないものの、もはや一介の高校生として生きることを許されない現実。アベンジャーズの中でも最年少であるスパイダーマンの魅力は、未成熟な等身大の青年が成長していくドラマ面にあるが、本作はその特長と『アベンジャーズ』シリーズの流れ、さらには観客の“アイアンマン・ロス”を見事にミックスさせ、ピーターに奮起を促していく。

そもそもピーターとトニーの関係性は、本作に至るまで4作品にわたって紡がれてきた。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016)』でトニーがピーターをスカウトし、『スパイダーマン:ホームカミング』でヒーローとしての在り方を叱咤とともにピーターに注入、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018)』で共闘&ピーターがアベンジャーズ入りを果たすも、敵サノスの“全宇宙の生命を半分にする”たくらみによってピーターが消滅、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でトニーがピーターを復活させ、再び共闘するが――といった流れだ。

トニーはピーターの“父親代わり”として成長を見守り続け、ピーターもトニーの期待に応えようと奮闘し続けてきた。しかし、この先の道は、ピーターが一人で歩んでいかなければならない。トニーから受け継いだすべてを背負って――。

そういった意味では、今回がMCUでは初のスパイダーマンの“単独作”といえる。われわれが目にするのは、これまでの4作品すべてを布石とした、堂々たる「独り立ち」だ。

中盤以降の展開がほぼネタバレになってしまうため多くは語れないが、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』には細部に至るまで「アイアンマンを超える」ための仕掛けが張り巡らされており、恐るべき精度の“脚本力”に圧倒されることだろう。ストーリーの流れはもちろん、細かいセリフ回しにもシリーズ愛が存分に盛り込まれている。

例えば、『スパイダーマン』シリーズの名セリフ「大いなる力には、大いなる責任が伴う」と連動したあるセリフや、劇中に登場するガジェット「E.D.I.T.H.」が意味する「Even Dead,I'm the Hero.(たとえ死んでも私はヒーロー)」は、トニーの名言「私がアイアンマンだ」を彷彿させるものであると同時に、ピーターに向けた激励のメッセージにもなっていく。

さらに、ピーターがトニーとオーバーラップする感動的なシーンも用意されており、一度ならず2度、3度と観ていくことで“涙腺崩壊ポイント”が増えていくことだろう。

新型コロナウイルスの影響でMCU新作『ブラック・ウィドウ』が公開延期となってしまった今、本作が果たす“意義”はますます重要だ。初見の方はもちろん、既に観ている方も今一度、この完璧な1本を堪能していただきたい。

■ 文=SYO

1987年生まれ。東京学芸大学卒業後、映画雑誌&映画情報サイト編集者を経て映画ライターに。複数のウェブメディア・雑誌・映画公式サイト等に寄稿するほか、トークイベントにも登壇。Twitter「syocinema」(ザテレビジョン)

最終更新:3/31(火) 7:00
ザテレビジョン

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