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遠藤健(SOMPOケア代表取締役社長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

3/31(火) 5:55配信

デイリー新潮

 介護業界と言えば、重労働・低賃金で離職率が高く、人手不足が著しいことで知られる。そこに参入した損保大手のSOMPOグループは、研修施設の設置やデジタル機器の導入で、いま職場環境を大きく変えつつある。8万人の利用者を抱える巨大組織が目指す、持続可能な介護のかたち。

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佐藤 この対談の第21回は、ワタミの渡邉美樹会長でした。飲食業のワタミが新規事業として乗り出した「ワタミの介護」は、本業の不振からSOMPOグループに引き継がれました。どうして損害保険の会社が介護事業をやろうということになったのでしょうか。

遠藤 SOMPOグループには約2千万人の保険契約者がいます。その方々との接点は、契約のときか、事故があったときだけなんですね。それをもう少し日常に広げていくことはできないか、というのが基本的な発想です。これから人口が減り、高齢化が進むなかで、保険というビジネスだけでは、安心や安全を届けられない。日常の接点を作ることで、いろいろなことが学べるし、さまざまなサービスができるだろうと考えたわけです。

佐藤 確かに安心・安全という基本的な哲学からすると、親和性はありますね。人間にとって優先度は、生命、身体、財産の順番です。保険も介護も、そのプライオリティがはっきり見える。

遠藤 そうですね。グループに介護が加わることで、さまざまな効果が期待できます。例えば認知症対策です。SOMPOグループには、SOMPOひまわり生命という生命保険会社もあります。軽度認知障害の段階で保険金をお支払いする保険を開発したり、産学協同で国立長寿医療研究センターと認知症をはじめとした高齢者の健康増進に関する研究を行なったり、介護事業は、こうしたところにつなげていくことができる。また損保にはリスクマネジメントのノウハウがありますから、これを介護事業における入居者の事故防止に役立てることもできます。

佐藤 SOMPOケアはかなり規模が大きいですね。

遠藤 ワタミだけでなく、介護業界大手だったメッセージやジャパンケアサービス、プランニングケアが合併しました。2018年のことです。いまは全国で拠点は千以上、約8万人の利用者がいます。

佐藤 介護施設というと、何千万円の入居金を出した上で月額40万~50万円かかる富裕層向けのところから、月額10万円台の施設までさまざまですが、SOMPOケアはどのくらいの価格帯なのですか。

遠藤 ワタミから引き継いだ「ラヴィーレ」というブランドは、入居一時金を分割にすると、月々30万円から35万円くらいです。メッセージから引き継いだ「そんぽの家」だと、入居一時金はなく、月々20万円前後。だいたい特別養護老人ホームの少し上くらいからの中価格帯です。

佐藤 圧倒的多数である中間層に向けた施設ですね。

遠藤 ええ、中間層です。そこをしっかり支えていきます。

佐藤 もちろん遠藤さんは、入社されてからずっと損害保険をやられてきたわけですよね。

遠藤 はい。私は安田火災海上保険に入社して、それが損保ジャパン、損保ジャパン日本興亜となっていくのですが、一貫して損保に携わってきました。そして2011年からはジャパン保険サービスという保険販売会社の社長を4年間務め、2015年の「ワタミの介護」買収の際に、白羽の矢が立ったんです。

佐藤 辞令を受けて、どう思いましたか。

遠藤 自分が介護事業をやるとは、思いも寄りませんでした。高齢の母がいますが、介護サービスを受けることもなく元気でしたから、介護自体、考えたこともなかった。ただその時、社外取締役から「保険会社にはオンとオフがある。夜間は営業活動をしていないし、土日は休める。けれども介護事業はそれがない。24時間365日体制だ」と言われたことは、強く印象に残っています。40年近く損保にいましたが、まったく違う世界に行くのだと、自身の気持ちをしっかり引き締めたのを覚えています。

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最終更新:3/31(火) 5:55
デイリー新潮

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