今や、スニーカーは私たちの生活に欠かすことの出来ない“生活必需品”。どんな人にも愛着のある一足があり、そこには多くのこだわり、思い出、物語が詰まっているはず。本コラムでは、様々なスニーカー好きたちが「MY KICKS(=私の1足)」をテーマに語り尽くす。
【フォトギャラリー】裏原宿から日本のスニーカー界を盛り上げた女性が推薦 シープスキンブーツの「UGG(R)(アグ(R)」初 の高性能ファッションスニーカー
高見薫(たかみ・かおる)さん
1991年ナイキに入社。アパレル担当として営業のキャリアをスタートし、2000年から原宿エリアを担当。全盛期の裏原宿で多数のファッションブランドやショップとのコラボレーション企画に携わる。18年よりデッカーズジャパン合同会社に勤務。
高見さんは1991年にナイキでアパレル担当の営業として働き始める。転機は96年から97年にかけて巻き起こったスニーカーブームの収束後にやってきた。ナイキは再びブームを盛り上げるべく新規事業を扱う「ニュービジネスチーム」を立ち上げ、高見さんを引き入れたのだ。
原宿エリアの担当となった高見さんは、当時隆盛を誇っていた裏原宿で、小規模店舗から世界中の若者に向けてトレンドを発信しようと意気込む人々を目の当たりにしたことで思いを新たにする。
「彼らと一緒に日本のカジュアルシーンを盛り上げたい」
しかし友人同士や先輩後輩の繋(つな)がりを重視するストリートカルチャーの世界に、一企業の営業が入り込むのは簡単なことではない。そこで高見さんは同僚たちとともに、渋谷~原宿近辺を動き回ることから始める。会社のデスクと商談先を往復しているだけでは、ストリートファッションの世界に入り込むことは不可能だと考えたからだ。
「全ては『今かっこいい人たち』と知り合いになるところから始まると思ったので、ナイキの同僚たちと東京の街を動き回りました。夜となればクラブに出かける必要もあったので、寝不足で会社に行っては怒られていましたね(笑)。でも毎日多くの人と出会い、言葉を交わしていくうちに、お店に商品を置かせてもらえるようになっていった。そこからじっくりと関係を深めていくなかで、次第にプロジェクトが大きくなり、ファッションディレクターの藤原ヒロシさんや人気ブランドSOPH.が立ち上げたフットボールウェアブランド”F.C.R.B.”、今では世界的なスニーカーショップとなっているatmosとのコラボレーションにも関わりましたね」(高見さん)
高見さんのスニーカールームにはおよそ600足のスニーカーがある。その中にはナイキ時代に裏原宿のクリエーターと共に世に送り出したものが少なくない。
「『集めた』と言うよりは『いつの間にか集まってしまった』もの。様々な方との思い出が詰まっているので簡単には処分することは出来ません」と高見さんは語る。その言葉を象徴するかのように、シューズラックには加水分解によってソールが崩壊寸前のスニーカーも多数見られた。履けなくなっても廃棄することは出来ないのだという。ここにある色とりどりのスニーカーはコレクションであると同時に、高見さんとファッション業界の繋がりを示すポートフォリオでもあり、またスニーカー業界での功績を示すトロフィーでもある。
「ストリートシーンでも着用できるファッション性の高いスニーカー」というコンセプトを反映して、シープスキンブーツとは全く異なる発想で設計されている「CA805 MLT」。まず目に入ってくるのがインパクトのある分厚いソールだ。こちらには、総合シューズメーカーであるUGG(R)の親会社デッカーズが長年にわたって蓄積したノウハウが詰め込まれているという。ただの厚底ではなく、軽量でクッション性の高い実用的なアウトソールで、非常に柔らかな履き心地だ。
「UGGの営業をはじめて1年ほどは、このCA805 MLTしか履いていませんでした。正直言ってこのシューズしか出ていなかったからなのですが、長年スニーカーに関わってきた私から見ても非常に歩きやすかった。とにかくクッション性が高く、客先で靴を脱がなければいけないシーンで、すばやく対応することが出来たのが印象に残っています。季節を問わず、雨の日も風の日もCA805 MLTを履いて得意先を回っていましたね。ですから、25年働いたナイキを離れて、初めて売った靴と言っても過言ではないので、本当に思い入れの深い一足なんです」(高見さん)
フロントがジッパーのみで、足を締め付け過ぎない設計なのも大きな特徴といえるだろう。これは「CA805 MLT」がスポーツ用ではなく、あくまで快適に街を歩き回ることを目的に設計されたアイテムだから。スリッポン感覚で気楽に脱ぎ履きがしやすい「タスマン」の機能を継承しているともいえる。
最終更新:4/1(水) 7:03
朝日新聞デジタル&[アンド]































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