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『映像研には手を出すな!』金森氏は“アニメ制作のリアル”を伝える 有能なディレクターの役割

4/1(水) 11:06配信

リアルサウンド

 今、話題の人気漫画『映像研には手を出すな!』。今年に入りNHKでのアニメ放映、そして実写ドラマ化、実写映画化の決定とノリに乗っている作品だ。今回はその映像研主要メンバーのひとり、金森さやかについてみていきたい。


■頼れる映像研のディレクター・金森さやか

 金森氏こと金森さやかは、映像研ではディレクターの役割を務めている。彼女は監督の浅草、アニメーターの水崎とは違いアニメに関する知識は乏しい。金森氏の役割はマネジメント。浅草・水崎がアニメを作れるよう環境を整え、部としての映像研を運営していくことを主としている。

 金森氏はアニメの内容についてはほとんど、二人に任せきりだ。二人がアニメ制作をしているとき、彼女は行動を共にしていないこともしばしばある。その間、彼女が何をしているのかというと、アニメ制作費となる資金を工面したり、アニメ上映に向けたプロモーションを企画したりしている。「アニメを作る」ことに力を注いでいる二人とはまったく違ったアニメとの関わり方をしているキャラクターだ。


■金森氏にとってのアニメは一事業にすぎない

 彼女はアニメを楽しんではいない。いや、「自分たちが作り上げるもの」としての楽しみ方はしているのであろうが、コンテンツとして消費されるアニメーーいわゆるアニメ好きがアニメに対して抱くような感情を彼女はアニメに対して抱いていない。三人の中で唯一、「アニメに対するこだわりがない」と言えばしっくりくるだろうか。アニメに対するアプローチの手法が他の二人とは根本的に異なっているのだ。彼女はアニメを金儲けの道具、会社で例えるところの一事業として扱っている。もし彼女に他に扱うべき事業があれば、それとアニメは区別することなく扱われるだろう。そもそもはじめは水崎氏のタレント性を利用して事業を興して金儲けをしようとしていたくらいだ。

 「今このとき、彼女がマネジメントとして扱うべき題材が映像研ーーアニメであった」アニメに対する彼女の思いはこのくらいのものであろう。


■映像研は彼女のビジネスの実践場

 では、なぜ彼女は映像研をマネジメントするのか。

 「我々はモラトリアムに守られている」彼女は1巻序盤にてそう言っていた。映像研の設立を二人に提案するために発せられた言葉であるが、これは部の設立のみに限った発言ではないだろう。アニメを一事業として扱い、「金儲けの実績を作ること」=「ビジネスを体現すること」がモラトリアムに守られた間に彼女がやっておきたいことに違いない。いわゆるテニス部に入部してテニスの技術を磨くとか、書道部に入部して綺麗な字を書けるようになるとか、そういったモラトリアムの消費の仕方を彼女は望んでいない。

 「私が好きなのは金じゃなく、利益を出す活動です。」と彼女の言葉にもあるように、利益を生み出す活動を行う場として映像研(会社)を作り、アニメ制作(事業)を軌道に乗せていく。これが彼女のモラトリアムの使い方だ。

 金森氏の金儲けの原点は、彼女の幼少期にある。小遣いを稼ぐために手伝いをしていたお店が閉店となってしまった。お客に対するアピール不足、不利な立地、単価の安く利益の出ない商品などが原因だ。彼女はそこで、客に対し適切なアプローチを行い、利益を生み出さなければ商売が成り立たないことを学んだ。この経験を実践として落とし込む場が映像研なのである。


■モノづくりの現実味を表す存在

 金森氏は映像研という会社にとって欠かすことのできない存在である。会社を運営するにはお金がいる。アニメを作るにはお金がいる。そこをカバーしているのがディレクターである金森氏。資金繰りという一見アニメ作りに関係なさそうにみえる行為をもって、アニメ作りを補佐している。この金森氏の存在が、映像研という作品を我々読者にとってぐっとリアリティのある作品へと引き上げてくれている。

 部活動がメインとなる漫画において、資金繰りについて触れている作品はほとんどない。触れたとしたも、「みんなでバイトをしてあの楽器を買おう!」とか「海の家のお手伝いをして部費を増やそう!」といった一時的なものである。

 一方の金森氏は、作品を作る度に金策をしている。資金繰りが1回限りではなく、それこそまるで会社の様に新たなアニメ(事業)のために資金繰りをし続けているのである。

 そしてそこには大勢の人が関わっている。教師・生徒会・SNS上の人・本屋さんなど様々な人と関わることによって金森氏は映像研に資金を供給し続けている。映像研(社内)でクリエイター二人が作品を作っている間、止まることなく外部と関わり資金を回し続ける。まるで会社活動そのものだ。

 情熱だけでは、才能だけでは、作品を生み出し続けることはできない。金森氏を通して、筆者からそう教えられているように感じられる。

 監督、アニメーター、プロデューサーとアニメに対する接し方が三者三様な三人組。彼女たちは才能も熱意もまったく違ったものを持っている。その三人が「アニメを作る」という目的のために集った映像研。これはまさに会社の疑似体験とも言える組織だ。その組織に求めるものすら違う三人が、これからどのような作品を作りどのように事業を発展させていくのか。最後まで目を離すことのできない作品である。

水城みかん

最終更新:4/1(水) 11:06
リアルサウンド

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