新型コロナウイルス問題への不安から、世界中で、人々はトイレットペーパーなどの生活必需品を買い溜めし、その結果、深刻な品不足が生じている。同じことが、金融の世界でも起こっている。それがドル需要の高まりとドル不足の問題だ。
米国では、全土で銀行や信用組合の預金から大量の現金が引き出され、一部の支店で現金が不足する事態が生じている。
連邦当局の預金保証の対象である銀行や一部の信用組合の預金は、政府によって最大では25万ドルまで保証されている。それにも関わらず、預金取り崩しの動きが広がっているのである。背景には、経済危機に備えて現金を手元に置いておきたい、という個人の考えがあるのだろう。
銀行がこうした顧客の現金需要を満たすことができなければ、破綻してしまう。銀行は、顧客からの現金需要、預金引き出し需要に応えるために、中央銀行に預けている中銀当座預金を取り崩して、現金を確保する。中銀当座預金の残高が不足すると、銀行が破綻してしまう恐れがあるため、危機時には、中央銀行は中銀当座預金の残高を大幅に増加させる対応をとるのである。これが、いわゆる流動性供給の拡大である。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、3月15日に量的緩和を再開し、米国債を大量に買い入れることなどを通じて、流動性供給を急拡大している。
ドルに殺到する動きは、米国内だけではなく世界中に広がっている。基軸通貨であるドルは、世界で多くの貿易取引、金融取引などに用いられていることから、ドルの調達が円滑にできなくなれば、世界の貿易や資金の流れは滞り、また金融機関や新興国などの破綻につながる可能性もある。さらに、ドルを調達するために、株式、債券など様々な金融商品が投げ売りされ、金融市場の混乱に拍車をかけている。米国や日本の国債さえも、売却対象となったのである。
危機が極度に強まる局面では、通常は安全資産とされる金融商品でも、それ以上に安全な資産を手に入れるために売却される。米国内で銀行預金を現金に換える動き、為替市場で安全通貨の円が売られドルが買われる動き、日本でドルを調達するために日本国債が売られる動き、米国で現金、中銀当座預金を確保するために米国債が売られる動き、などは、こうした異常な事態を裏付ける現象なのである。
そこでFRBは、国内だけではなく、世界中で、金融市場の混乱の原因ともなっているドルの調達を助ける措置を講じている。
FRBはカナダ中銀、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(英中央銀行)、日銀、スイス中銀の主要5中銀と常設的な通貨スワップ協定を締結し、ドル資金を供給してきた。3月15日(米国時間)には、この協定に基づいて各国中央銀行が実施しているドル供給オペに、従来の1週間物に3か月物を新たに加え、その後、オペの頻度を1週間物については週1回から毎日へと変更した。
3月19日には、スワップ協定に基づくドル供給先にブラジルや韓国など9中銀を加え、対象を14中銀にまで広げたのである。
最終更新:4/2(木) 14:59
NRI研究員の時事解説































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