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50年後、人類は今の気候危機を克服しているはずだ

4/3(金) 7:21配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

「アースデイ」が誕生した今から50年前、学生たちは水質汚染や人口過剰、大気汚染を憂えていたが、私の母は楽観的だった。「人類は必要に迫られると本腰を入れる」と信じていたのだ。

ギャラリー:海中で農業ができる?ほか、自然と共存しながら繁栄する方法

 ある意味それは正しかった。大気汚染を取り締まる法律のおかげで、米国では自動車が排出する汚染物質はあの頃より99%も少なくなった。

 では50年後はどうだろう。

2070年、生活は様変わりし、気温も高くなる。それでも私たちは炭素の排出を抑え、自然と共存しながら繁栄する方法を見つけていくだろう。

 現在、炭素排出の4分の1を占めるのが発電と熱の生産だ。ただ幸いなことに、政治努力によってどちらも削減が容易である。気候変動の解決策を分析する「プロジェクト・ドローダウン」のジョナサン・フォーリーは、これらの炭素排出量を「10年で半減させるのは簡単」と語る。風力や太陽光の発電技術も成熟して大規模な展開が可能になっているし、蓄電システムも性能が上がり、費用が下がってきた。

 農業、林業、土地利用の問題はもっと複雑だ。堆肥や化学肥料に由来する亜酸化窒素、家畜のげっぷに含まれるメタン、燃料使用や焼き畑で出る二酸化炭素もまた、すべて合わせると炭素排出(温室効果を二酸化炭素に換算)の4分の1を占める。2070年には、世界の人口が100億人を上回る。農業が環境にかける負荷を減らしつつ、全員が飢えないだけの食料を生産するにはどうしたらよいだろうか。

 食肉生産への補助金を停止して、社会全体を菜食寄りにするのが一案だ。土地と水を特に多く使うのが牛肉で、重さ1キロの牛肉を生産するのに、約6キロの植物が飼料として必要になる。だが幸い、味の良い代替肉が登場している。2070年にすべての人が菜食になっているとは思わないが、肉の消費量は今よりはるかに減るはずだ。

 炭素排出源は工業、輸送、建物にも及ぶ。ガスや石油の古い暖房を使っている建物は何十億棟とある。その設備を更新するにはどうすればいい? 世界の道路を走っている15億台ものガソリン車を排除するには?

 現実的なのは、政府が優遇税制と規制強化を進めることだろう。ノルウェーで登録される新車の半数が電気自動車なのは、売上税が免除されてガソリン車並みの価格で買えるからだ。さらにガソリン車の販売は2025年までに禁止となる。

ニューヨーク市議会は2019年春、大中規模建築物の炭素排出を2030年までに4分の1以上削減することを法律で定めた。米国ほど大きな国になると、国全体で建築物の改善、大量輸送機関の導入、電気自動車の普及を進めようとすると莫大な費用がかかる。それでも、2008年の金融危機で米連邦政府が「銀行に拠出した公的資金ほどではありません」とフォーリーは言う。

 私たちも変わる。地球に生息する多くの種の一つとして、人類をとらえ直すようになるだろう。その頃、20世紀後半から21世紀初めを振り返れば、苦しく激しい移行の時代だったとわかるだろう。人間同士、そしてほかの生き物とより良い関係を築き、その生態系のなかで繁栄していくことをこのとき学んだのだと気づくはずだ。


※ナショナル ジオグラフィック3月号「地球が再生する理由」では、 ノンフィクション作家が楽観的な2070年の未来像を描きます。

文=エマ・マリス/ノンフィクション作家

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