欧州各国では、新型コロナウイルス対策のために実施されているロックダウン(都市封鎖)を、国民がどの程度遵守しているかを政府が把握するために、スマホの位置情報が広く用いられている。
通信会社がプライバシー規定に抵触しないよう、データを匿名化したうえで、スマホ、携帯電話の位置情報を政府と共有することが、ドイツ、オーストリア、スペイン、ベルギー、英国などで実施されている。各国政府は、市民の移動や集会への参加などの状況を調べるために、この情報を利用しているという。
米政府も、数百万台のスマホや携帯電話から得られる位置情報データを利用して、市民の移動経路が感染拡大にどう影響しているかを分析している。
連邦政府は、米疾病対策センター(CDC)を通じて、特定の地域に市民がいつ滞在し、どう移動しているかに関連する携帯電話の分析データを入手している。これらのデータは通信会社ではなく、モバイル向け広告業界から得られているという。
また、感染者を隔離する目的で、スマホの位置情報を用いている国もある。韓国では、2週間の隔離を命じられた約3万人を追跡する「自主隔離安全保護」アプリを政府が導入している。隔離されている人がスマホを許可エリアの外に持ち出すと、警報が作動する仕組みである。イスラエルでは、感染リスクのある人物の居場所を特定するために、携帯データが利用されている。
他方、感染者を隔離する目的ではなく、感染者や感染のリスクのある人の行動を国民に知らせる目的で、スマホの位置情報を利用しているケースもある。韓国の保健当局は、新型コロナ感染者や感染リスクがあるとみられる特定の人物について、その携帯の位置情報を追跡して、匿名でその居場所をネット上で公開している。
他国に遅れて、日本でも政府がスマホ、携帯の位置情報の活用を始めようとしている。日本政府は3月31日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、携帯電話会社やIT企業に対して、位置情報等のデータの提供を要請した。この要請には法的拘束力はない。
位置情報とインターネットの検索情報を分析して、多数の人が集まっている場所や感染が広がっている地域の把握、クラスター(感染者集団)の早期発見等につなげる狙いだという。
検索結果のデータについては、例えば、特定の地域で「発熱」や「マスク」といった言葉のネット検索が増えれば、感染の拡大や医療品が不足していると推測でき、対策を講じることができる、と説明されている。
東京都などで現在出されている外出自粛要請でも、人々の行動にはかなりの影響を及ぼしていることを踏まえれば、仮に政府が緊急事態宣言を出し、法的根拠を持つ外出自粛要請を示す場合には、欧州のように罰則規定はないとしても、海外で広まっているロックダウン(都市封鎖)に近い状況に至るのではないか。
そうした場合には、政府が入手するスマホの位置情報は、若者を中心として、人々が外出自粛要請を受け入れずに密閉された空間に多数集まるようなケースをあぶり出すために、利用されるのかもしれない。
最終更新:4/3(金) 9:17
NRI研究員の時事解説































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