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デモと新型コロナで加速、香港教育オンライン化の光と影

4/3(金) 17:00配信

日経ビジネス

 香港の大学、小中学校は日本より早く教育のオンライン化を進めてきた。大学でも警察と抗議者の激しい衝突による大学閉鎖の影響もあり、すでに全授業のオンライン化が行われている。日本でも新学期を迎えたが、新型コロナウイルスの影響で対面での授業ができない大学が増えるだろう。急遽、授業のオンライン化を迫られている教育機関の担当者も多いはずだ。私自身香港の大学に博士課程の学生として在籍し、ティーチングアシスタント(TA)でもある。香港の先行事例を紹介しつつ、教育のオンライン化のメリット、デメリット、課題を考えてみたい。

【写真】大学図書館に電子書籍のない本は「E-copy Request」 のボタンを押せばすぐに電子書籍の購入を検討してくれる

●大学デモがオンライン化をスムーズに

 香港の大学では武漢での新型コロナウイルスの広がりを受けて、旧正月(1月25日)前後のもともとの休みを延長した後、オンラインで授業を再開した。大学内のオンラインでの授業やミーティングは、ライブ配信ツール「Zoom」の教育機関向けプランを利用していることが多いようだ。

 もともと香港の大学において教材や書籍の多くは電子的にオンライン上にアップロードされているため、オンライン授業の導入に関してはそれほど問題がなかった。また昨年の抗議活動で、香港中文大学と香港理工大学で激しい衝突が起きたことから、それぞれの大学は学期を打ち切ったり、残りの授業をオンライン化することを決めた。このタイミングで「Zoom」を導入した大学もあった。その後、新型コロナウイルスが流行した際に、香港の大学でスムーズなオンライン授業への移行が可能だったのには、こうした事情がある。

 香港の小学校・中学校(日本の中学校・高校に相当する)もZoomを導入している学校が増えている。筆者が見聞きした限りだと米グーグルの授業向けコミュニケーションツールである「Google Classroom」で授業のお知らせや宿題提出を行い、授業はZoomで行うという形式を取っているところが多いようだ。

●イベントや図書館もオンライン化

 Zoomが使われているのは授業だけではない。新型コロナウイルスの影響で当初予定されていた多くのイベントは中止になったが、大学全体でZoomを導入したことから各種イベントがオンラインに移行していった。例えばいわゆるセミナーや、新型コロナウイルスを公衆衛生や感染症の専門家が解説するというのもあった。

 なおZoomの有料版を使えば「Twitter」「Facebook」「YouTube」からライブ配信をすることも可能になる。ただし、数十秒の遅延が発生するようだ。筆者は実際にZoomで撮影しながらFacebook上やTwitter上でライブ配信を行うイベントを試行している。どこからでも参加できるためか、通常のイベントよりも人が集まることもある。

 多くの大学図書館は3月下旬から完全閉鎖をしており、本の返却もできない。しかしオンラインで図書館利用ができるように、大学図書館は様々な取り組みをしている。例えば、Zoomや「Whatsapp」で図書館の職員に電子図書館の利用方法や引用ツールなど大学が提供する各種ソフトウエアの使用方法について尋ねることができる。本の取り置きも停止されているので、電子データベースに収録されていない本の場合、図書館職員に購入を依頼して電子書籍を受け取ることもできる。なお、図書館はオンラインで授業を受ける電子機器を持たない学生に対してパソコンを貸与するサービスも行っている。

 大学も小中学校も、これまで使っているシステムの通話機能を使わずにZoomを選んでいる。グーグルの「G Suite」を主に利用している学校であれば、「Google Hangout」を使うことをまず考えるだろうし、米マイクロソフトの「Office365」を利用していれば「Skype」や「Teams」の利用を考えるのが自然だろう。それでもZoomを選ぶ大学が多かったのは、恐らく人数が増えてもデータ容量が他のサービスに比べればかなり少なく済むという特徴がオンライン授業に向いていると判断されたからと思われる。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、香港では5人以上で集まることに罰則を設けている。そのため、求職者向けの会社説明会から教会の礼拝までZoomが様々なイベントで利用されるようになった。

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最終更新:4/3(金) 17:00
日経ビジネス

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