文 田島 大
再開しても無観客。そんな決断を強いられる日が来るかもしれないので、参考のためにある記事を紹介したい。イングランドでは過去に、試合の熱気や雰囲気を損なわないために“フェイクのファン”を用いたクラブがあると英紙『The Guardian』の電子版記事が綴っている。
ファンから寄せられた情報によると、2005-06シーズンにミドルズブラ(現イングランド2部)が斬新なアイデアを打ち出したという。スティーブ・マクラーレン監督率いる当時のボロは、UEFAカップ(現UEFAヨーロッパリーグ)で快進撃を見せていた。そこでクラブは、選手たちを後押しするために応援チャントの音声を収録することに。ファンに呼びかけたところ、12名ほどが収録に参加したという。
そして迎えたUEFAカップ準決勝のステアウア・ブカレスト戦。ファーストレグを0-1で落としていたボロは、本拠地での第2戦で逆転勝利を目指した。この試合は無観客ではなかったが、前半25分の段階で2点を奪われ、2戦合計0-3という絶体絶命のピンチに陥った。
すると、場内スピーカーからあらかじめ収録した「Come on Boro」の音声が流れた。スピーカーを通して改めて12名の男たちの叫び声を聞くと相当な違和感があったそうで、会場は爆笑に包まれたという。数分後、再びスピーカーから「Come on Boro」が流れると、今度は場内のファンから汚い罵声が飛ぶようになった。ファンの反感を買ってしまったクラブは、すぐにこの音声を封印したという。
試合はというと、この“フェイク声援”に効果があったとは思わないが、ボロが「クラブ史上最高の夜の1つ」となる大逆転勝利を収めて決勝に駒を進めた。ボロに関する記事はそこで終わっているのだが、この試合を掘り下げてみると興味深いストーリーが見えてくる。
まずは、どのようにして逆転したのか。試合早々に計0-3の崖っぷちに立たされたボロは、前半26分にCBに代えて元イタリア代表FWマッシモ・マッカローネを投入した。すると同選手のゴールを皮切りに反撃を開始。73分には計3-3の同点に追いついた。それでも、このままではアウェイゴール差で敗れるという状況で、やはりマッカローネが89分に劇的なダイビングヘッドを決めて大逆転したのだ。
前線にはマーク・ビドゥカやジミー・フロイド・ハッセルバインク、他にもMFスチュアート・ダウニング、MFファビオ・ロッケンバック、MFジョージ・ボアテング、GKマーク・シュウォーツァーなどのタレントを擁し、見事にクラブ史上初の欧州カップ戦ファイナルへと進出した。そして、大逆転の名采配を振るったマクラーレン監督は、試合の1週間後にイングランド次期代表監督に任命されるのだった。
しかし、UEFAカップ決勝では格上のセビージャ相手に成す術もなく0-4で惨敗。さらにマクラーレン監督は、イングランド代表でも24年ぶりに欧州選手権(ユーロ2008)出場を逃す失態を演じて解任されることになった。
それでも、代表監督の系譜はしっかりと受け継がれていた。現在、代表チームを率いて来年に延期されたEURO2000に出場する監督こそ、あのステアウア戦の前半早々に交代させられたギャレス・サウスゲイトなのだ。
最終更新:4/5(日) 11:13
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