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どの患者を“助けない”べきなのか? 新型コロナウイルスと闘う医師たちが「命の選別」に取り組もうとしている

4/6(月) 12:13配信

WIRED.jp

マンハッタンの病院で働く救急救命(ER)専門医のスティーヴン・ウォールには、新型コロナウイルスの感染者が急増している状況がはっきりと感じられた。通常なら人工呼吸器が必要になる機会は毎回の勤務シフトでせいぜい1回で、たいていはけがをしてパニック状態に陥っている患者を落ち着かせるために一時的に使用する程度だった。それがいまでは、毎日ほぼ2時間ごとに気管挿管の措置を施している。

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ニューヨーク市のあらゆる場所で同じことが起きていることを、ウォールは知っていた。クイーンズのエルムハースト病院では、ベッドが空くまで待っている間に患者が死亡した事例が複数確認されているという。

この状況が続けば、彼が勤務する病院でも医療機器や人手が足りなくなるのは明らかだった。「患者の優先順位を判断して医療機器の割り当てを始める必要が出てくるでしょう。2~3週間でそうなります」

人工呼吸器の“割り当て”が意味すること

人工呼吸器の“割り当て”とは、具体的にはどのようなことを意味するのだろうか。ウォールはニューヨーク大学で臨床生命倫理学を研究しているが、この問いに対する明確な答えはもち合わせていない。年齢で判断すべきなのだろうか。医療崩壊に陥っているイタリアでは、高齢者は治療を断念するといったことが実際に行われている。

ただ、年齢は若いが健康状態は悪く、人工呼吸器をつけても死亡する可能性の高い若者の場合はどうすべきだろう。患者が医療従事者で、数週間以内に回復して現場に復帰できそうなら優先すべきなのか。指針は何も示されていない。

生命・医療倫理分野のシンクタンクであるヘイスティングス・センターのナンシー・ベリンガーは、このテーマが「全米で議論されている問題です」と言う。状況は感染者が激増するニューヨークで最も緊迫しているが、生命倫理の専門家たちはどこに住んでいても、これから起きるであろう事態に備える必要がある。

ニューヨーク大学医学部で医療倫理部門の責任者を務めるアーサー・キャプランは、政府の新型コロナウイルス対策調整官を務めるデボラ・バークスの発言に疑問を投げかける。「バークスは優先順位について考えるべきときではないし、病床が不足するような心配は無用だと言っています。でも、わたしはそうは思いません。感染者の急増を想定して準備すべきです。エルムハースト病院のような小規模な医療機関は、すでに限界に達しています」

キャプランは、ニューヨーク大学が進める医療機器の割り当て計画の策定を主導している。その詳細を数日中に公開する予定だという。

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最終更新:4/6(月) 12:13
WIRED.jp

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