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映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」 知られざるポイントを専門家が解説

4/6(月) 8:00配信

デイリー新潮

 作家・三島由紀夫と東大全共闘(実力闘争を掲げた学生運動組織)は1969年5月13日、東大駒場キャンパスで2時間半の討論会を行った。全共闘は人寄せのポスターに“近代ゴリラ”三島の戯画を描いた。会場の大教室は1000人余りの学生で埋まり熱気に包まれた。これをいくつかの週刊誌がセンセーショナルに報じ、世間の耳目を集めた。

 三島は事前に討論会の書籍化を新潮社に持ちかけていた。編集担当者は、出始めたカセットではなく重いオープンリールテープの録音機を携え、社のカメラマンも三島に同行して会場に乗り込んだ。その記録は、翌月『討論 三島由紀夫vs.東大全共闘〈美と共同体と東大闘争〉』として緊急出版された。

 一方学生たちは自分たちを取材しその主張をTV番組で取りあげたTBSに声をかけていて、討論の映像はニュースで流された。TBSが撮った一部はネットの動画サイトで視ることが出来るが、今般それを全面的に使った映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』が制作され、衆目に触れることになった。

映画に欠落しているもの

 映画は3月20日に全国で上映が始まったが、私は配給会社と日本外国特派員協会での試写会、そして映画館でと3回観た。動画とスチルをふんだんに用いていて、活字では得られない臨場感を享受することができた。壇上でやり取りする三島と学生たちの挙措と息づかい、会場に詰めかけた学生たちの真剣な眼差しも鮮明に伝わってきた。

 しかし物足りないと感じたことが一つあった。TBSのスタッフ、新潮社のカメラマンは“討論の場にいた人々”として登場するのだが、そこに書籍化の担当者(存命)がいないのだ。これまで50年間は、この担当者が携わり活字化されたものが討論にアクセスできる唯一のものだった。この人物に映画が全く触れていないことが不可解だった。私は豊島圭介監督に試写会で質問した。すると「カメラマンは、それが誰なのか思い出せなかったんです」との返答だった。監督はかなりの資料に目を通したそうだが、この者の自叙伝にある出版化に纏わる貴重なエピソードを見逃したようだ。

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最終更新:4/6(月) 8:00
デイリー新潮

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