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公式戦登板1イニングもドラフト候補へ。 慶應大左腕は杉田玄白の子孫

4/6(月) 11:50配信

webスポルティーバ

現時点では「もっとも実績のないドラフト候補」と言えるかもしれない。

 慶應義塾大の左腕・長谷部銀次のことだ。なにしろ大学3年間で東京六大学リーグ通算1試合、1イニングしか登板していない投手である。それでも、今年に入ってチーム関係者の間から「長谷部がとんでもないボールを投げていますよ」と話題になっていた。3月21日の仙台大とのオープン戦で長谷部を視察したあるスカウトは「十分にドラフト候補に挙がってくるでしょう」と断言した。

全国実績ナシ→大学で衝撃デビュー。慶応大左腕が魅力UPでドラ1候補へ

 身長183センチ、体重76キロのいかにも本格派投手らしい体型で、スピード感と迫力のある体重移動から左腕を猛烈に叩く。球速は現時点で最速149キロだが、まだまだ増速する気配がある。変化球もキレのあるスライダーとツーシームを武器にする。

 仙台大とのオープン戦後、長谷部は野球部を通してこうコメントしている(以下カギカッコ内同)。

「今は投げられることが楽しいし、幸せです。1年前は課題を持つことすらできなかったので」

 長谷部がここまで台頭できなかった要因は、腰椎分離症にある。中京大中京(愛知)に所属した高校2年の冬から痛みが出て、それ以来、腰の痛みと付き合い続けた。痛みが出る、治療する、投げる、痛みが出る......そんな悪循環を繰り返し、長谷部は大学2年の秋に大きな決断をする。

「大学2年間を過ごしてきて、だましだましやるより手術してもう一度100パーセントの状態でやりたいと思ったんです」

手術するということは、長いリハビリ生活を送ることを意味した。長谷部は「焦りはなかったと言えば嘘になる」としながらも、腰痛に苦しみ続けた3年間でも前向きに取り組めたという。

「同期の関根(智輝)、佐藤(宏樹)、木澤(尚文)がリーグ戦でいいピッチングをしていたのが、いいモチベーションになりました」

 野球選手は一線級になればなるほど、負けず嫌いな性分のはずだ。嫉妬に身を焦がし、周囲の活躍を面白く思わなかったとしてもおかしくはない。だが、長谷部はこう考えていた。

「悔しい、悔しい......という思いは根底にありましたが、同期の活躍は純粋にうれしいですし、自分もそれ以上のピッチングをすることが目標になっていました」

 裏を返せば、長谷部は自分自身の可能性を信じていた。

 同じような境遇で奮闘する同期の姿も支えになった。前出の関根は1年春のリーグ戦で開幕投手を務めるなど、安定感のある投球で1年時だけで5勝をマークしていた。

 だが、その後はヒジの故障に苦しんで停滞。ちょうど長谷部の手術と近いタイミングでトミー・ジョン手術を受けた。一軍メンバーの入る寮から一般寮に移っても腐ることなく、リハビリに励む関根の姿に、長谷部は「負けないぞ」という思いを新たにした。

 リハビリ期間には、投球フォームについてじっくり考える時間もあった。「二段モーションぎみに軸足でしっかり立ってから始動しよう」と長谷部は新しい投球イメージをふくらませた。

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最終更新:5/12(火) 12:23
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