日本を代表するクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏。一日の多くは「打ち合わせ」で埋め尽くされているという。30を超えるプロジェクトが常時無理なく動いているという佐藤氏の仕事を支えているのは質の高い打ち合わせだ。文庫化された「佐藤可士和の打ち合わせ」から、同氏が実践する打ち合わせの極意をのぞいてみよう。
打ち合わせにおいて最も大事な能力は何か、と問われたら、僕は「イメージ力」と答えます。どんな打ち合わせになるか、イメージしておく力です。
先に「大切なことは打ち合わせの目的だ」と書きましたが、目的がはっきりしていれば、どんな打ち合わせになるのかは、なんとなくでもイメージできるはずです。それを、ほんの少しでも考えようとしているか、いないのか。その差は大きいのです。
ところが、何も考えないで、いきなり打ち合わせに来ている人は実は多いものです。書類やファイルは持っているけれど、読み込んでもいない。これでは、打ち合わせに必要なイメージはできないでしょう。「とりあえず打ち合わせが始まってから考えよう」では圧倒的に遅いのです。
打ち合わせとは、みんなで一緒に「作り上げる」場です。そして、「作ること」は、「イメージすること」から始まります。いきなりモノが出てきたり、アイデアが出てきたり、実行案が出てきたりすることはありえません。イメージできないものが、現実になることはないのです。
どんな素晴らしいアイデアも、デザインも、プロダクトも、すべて「こんなものがあったらいいな」「こういうことが起きればいいな」といったぼんやりとしたイメージから始まるのです。僕自身の仕事も、そうしたイメージから、すべて始まります。それこそ妄想であり、構想であり、まだこの世にないもの。ぼんやりとした頭の中の想像であり、イメージです。
かつてスキーでオリンピックに出場したアスリートと対談したことがありますが、スポーツの世界でも、イメージは極めて大切なのだそうです。
イメージをしなければ、身体が動かない。真っ白な頭の状態で、突然、身体を動かすことはできないというのです。やはり何かをイメージし、それを身体で表現する。スポーツとは、イメージを身体で表現するものだ、と言われていました。
すべてはイメージから始まるのです。そして、そのぼんやりとしたイメージを意見としてぶつけあうことで具体化していくのが、打ち合わせの場なのです。
もちろん、いきなり正解を持ってくる必要などまったくありません。正解でなくていいのです。これはどうだろう、あれはどうですか、こんなのダメですか、こんなことしたら面白くないですか、といったとりとめのないイメージでまったく構いません。
そもそも正解などないのが、仕事の世界です。正解はあるのではなく、作るもの。正解のないところに、各々がイメージを持ち寄り、正解を作り上げていく場。それこそが「打ち合わせ」なのです。
最終更新:4/7(火) 7:27
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