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人を殴っても「犯罪」にならないことがある?刑法のナゾ

4/7(火) 17:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

不正アクセスや煽り運転など、現在の日本では誰もが被害者になる可能性があります。そんな身近に潜む犯罪から身を守り、万一のときのために知っておきたい情報を、警察OBが伝授します。※本連載は『新装改訂版 警察は本当に「動いてくれない」のか』(幻冬舎MC)から一部を抜粋し、改編したものです。

犯罪の成立には「3つの要件」を満たす必要がある

今回は、警察はどのような条件が整っていれば捜査を開始することができるのか解説していきましょう。

まず、警察が捜査を開始できるのはあくまでも「犯罪」行為が行われた場合です。一般の人は、人をだましてお金をせしめたり、殴って傷つけたりすれば、それだけで「犯罪」になると思っているかもしれません。

しかし、人からお金をだましとったり、殴って傷を負わせたとしても、必ず「犯罪」になるとは限りません。

近代国家では、どのような場合に「犯罪」となるのかは、あらかじめ法律によって定めなければならないことになっています。これを「罪刑法定主義」と言います。

この原則に基づいて、犯罪が成立するためには、(1)構成要件に該当すること、(2)違法性が認められること、(3)責任が認められることが求められているのです。したがって、たとえば、人を殴って傷を負わせたとしても、この三つの要件を満たさなければ犯罪とはならないのです。

では、この(1)から(3)の中身について詳しく確認していきましょう。

「規定した条文にあてはまる事実」があるか?

まず(1)構成要件とは、法律によって守られている利益(法益)を、具体的には生命や身体、財産、名誉などを侵害する行為もしくは侵害する恐れのある行為を刑罰法規の中で類型化して示したものであり、刑法をはじめとした刑罰法規の各条文の中で示されています。

たとえば、傷害罪であれば、刑法204条で「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。つまり、傷害罪の構成要件は「人の身体を傷害する」ことになるわけです。

また、窃盗罪であれば、刑法235条で「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。そこで、窃盗罪の構成要件は「他人の財物を窃取する」ことになります。

こうした傷害罪、窃盗罪について規定した条文にあてはまる事実があれば、すなわち、人を殴って傷つけたという事実やあるいは他人の財布を盗んだという事実があれば、それぞれ傷害罪、窃盗罪の構成要件に該当するとみなされることになるわけです。

主な犯罪の構成要件を示した刑法の条文

(刑法95条 公務執行妨害罪)

1 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

(刑法174条 公然わいせつ罪)

公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

(刑法185条 賭博罪)

賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

(刑法209条 過失傷害罪)

過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。

(刑法217条 遺棄罪)

老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。

(刑法222条 脅迫罪)

1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

(刑法236条 強盗罪)

1 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

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最終更新:4/7(火) 17:00
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