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「麒麟がくる」の主演も務める長谷川博己が併せ持つ“3つの顔”<ザテレビジョンシネマ部>

4/7(火) 7:00配信

ザテレビジョン

その男は、飄々とギラついている。凪いだ海のように泰然としているかと思えば、大時化の如く狂気と暴力性を爆発させる。俳優・長谷川博己は、静と動の落差が計り知れない。

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4月12日に、長谷川が稲垣吾郎、渋川清彦、阪本順治監督と組んだ映画『半世界(2019)』(4月12日[日]よる9:00 WOWOWシネマほか)が初放送。今回は本作を中心に、大河ドラマ「麒麟がくる」の主演も務め、円熟期を迎えた彼の魅力を掘り下げていこう。

『半世界』は、40代を目前にした幼なじみ3人の日常に潜む懊悩や苦労、再生を見つめた人間ドラマだ。地元で暮らす炭焼き職人の紘(稲垣)とカーセールス業者の光彦(渋川)の前に、自衛隊に入ったはずの瑛介(長谷川)が帰ってくる。久々の再会を喜ぶ2人だが、瑛介はある出来事から心を深く閉ざしてしまっていた…。

本作で長谷川が担うのは、物語に起伏をもたらすポジション。突然の帰郷という“事件”で日常をかき乱し、忘れかけていた“友情”に火をつけていく。

序盤は他者を遮断する内省的な演技で波風を立たせ、傷心が和らぐ中盤は穏やかな表情で落ち着かせ、その後に起こったある出来事で、抑え込んでいた激情を爆発させる。自衛隊出身という役柄にひもづくアクションも用意されており、長谷川の実力が120%詰まった作品と言えるだろう。

表現スキルという面でも“引き出しの多さ”を見せつけてくれるが、観る者に与える“感覚”もこれまた多彩。暗い過去を抱えたアダルトな色気、少年のような純真さ、猛り狂う危うさ…この作品には長谷川博己の“3つの魅力”が集約されているのだ。

まず1つ目は、彼の出世作で、映画化もされたドラマ「セカンドバージン」(2010)に象徴されるような大人の男の魅力だろう。『二重生活』(2015)では真昼間から建物と建物の隙間で不倫相手と情事にふける妻帯者、『この国の空』(2015)では年下の女性と危険な関係に落ちる(これまた)妻帯者を演じるなど、挑戦的なキャラクターに扮してきた長谷川。

『半世界』に直接的なラブ・シーンがあるわけではないが、その分細身のスーツ姿や隙のない“居方”、多くを語らないミステリアスな雰囲気で魅せる。

2つ目は、自らの感情が素直に表情に出てしまうピュアな部分。『散歩する侵略者』(2017)で侵略者の青年と交流するジャーナリスト、『ラブ&ピース』(2015)では挫折した元ロック・シンガー、ドラマ&映画「鈴木先生」シリーズ(2011~2012)では妄想を抑える教師と、多くの濃いキャラクターを演じてきた長谷川だが、これらの作品に共通する、整った表情をくしゃくしゃにして笑うシーンが『半世界』でも観られる。

内閣官房副長官を演じた『シン・ゴジラ』(2016)や明智光秀に扮する大河ドラマ「麒麟がくる」など、理想に燃える熱いキャラクターも、この発展形といえるだろう。

そして3つ目は、観る者に強烈な印象を刻み付ける怪演。数々の舞台や『セーラー服と機関銃 -卒業-』(2015)で演じた極道の若頭など、魅せるアクションもお手の物な長谷川だが、ドラマ&映画「MOZU」シリーズ(2014~2015)での犯罪エージェントに代表されるような、ぶっ飛んだ狂気もまた彼の魅力だ。

分類的には2つ目の要素を持つ『地獄でなぜ悪い』(2013)の映画監督役も、情熱が行き過ぎてアブない領域にまで達してしまった役。『半世界』では長谷川の持つ爆発力が、自らを破滅に導く“諸刃”として描かれており、新しさを感じられることだろう。

これらの魅力が詰まった『半世界』は、いわば長谷川博己の入門書。2時間通して変化し続ける彼の“世界”をぜひ、楽しんでいただきたい。

■ 文=SYO

東京学芸大学卒業後、編集者を経て映画ライターに。CINEMORE、FRIDAYデジタル、映画.com、DVD&動画配信でーたなどに寄稿。Twitter(@SyoCinema)フォロワーは1万9000人超。(ザテレビジョン)

最終更新:4/7(火) 7:00
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