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韓国・文在寅政権にとって日韓通貨スワップの要請は諸刃の剣

4/8(水) 19:22配信

ニューズウィーク日本版

──総選挙を控え与党支持者の間で日韓スワップに批判の声も

新型コロナウイルスの感染者拡大で経済が萎縮するなか、韓国銀行は120億ドルを市中に供給した。米韓通貨スワップを原資に、2020年3月31日、銀行法で定める銀行と韓国産業銀行、中小企業銀行、韓国輸出入銀行を対象に入札を行った。他の金融機関は落札者から供給を受ける。

● 動画:米韓通貨スワップをめぐって韓国では

■ 米連邦準備理事会は9カ国と通貨スワップを締結

米連邦準備理事会(FRB)は3月19日、新型コロナウイルスの拡大による経済の混乱を緩和するため、オーストラリアやブラジルなど9カ国の中央銀行と総額4500億ドルの通貨スワップを締結した。6カ月を予定し状況を見て延長を検討する協定で、韓国銀行は600億ドルの協定を締結した。

通貨スワップは、必要に応じて自国通貨を相手国の中央銀行に預け、相応する外貨を借りることができる制度で、借り受けた中央銀行は外貨を市中に流通させ、決済が不能となる事態を防ぐが、流動性が確保されるなど為替市場の安定化に寄与する効果がある。

韓国銀行はカナダ、中国、スイスなど7カ国と1332億ドル相当の通貨スワップ協定を締結している。外貨準備高は6か月以上の輸入決済代金に相当する4019億ドルで、すぐに問題が生じることはないが、安心できる規模ではない。

韓国銀行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は2月22日と23日、サウジアラビア・リヤドで開かれた20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)に出席し、ジェローム・パウエル米FRB議長と会談を行って、米韓スワップを要請していた。

■ 1回目の米韓通貨スワップは延長されなかったが......

韓国は貿易依存度が国内総生産(GDP)の約70%と米国や日本と比べて2倍から3倍高く、国内資本市場も外国人投資家が占める割合が40%に達するグローバル経済危機に脆弱な国のひとつである。1ドル=1100ウォン前後で推移していた外国為替市場は3月20日には1ドル=1285.70ウォンまでドル高ウォン安が進行した。2008年から09年に広がった金融危機以降、最大の変動幅だ。

1997年にタイを中心にアジア通貨危機が始まったとき、韓国では財閥が次々に破綻し、株価は暴落、国際通貨基金(IMF)の支援を受け、アメリカのサブプライムローン問題を発端とするいわゆるリーマンショックでも深刻な経済危機に陥った。米国と電撃的に締結した通貨スワップを利用した為替介入で一時的な安定を取り戻している。

1回目の米韓通貨スワップは2008年10月30日に電撃的に締結された。規模は300億ドルで2009年4月30日まで6カ月の期間限定だったが、2度の延長を経て2010年2月1日に終了した。リーマンショック前の2008年8月に1ドル=1089ウォンだった為替相場が1ドル=1200ウォンを超えたあたりから外貨の需給バランスが崩れ、一時1ドル=1500ウォンを超える水準までウォンが下落したのだ。

米韓通貨スワップの期限となったとき、韓国は延長を要請しなかった。外為市場は1ドル=1100ウォン台で安定しており、また、友好な関係にあった日本との通貨スワップや中国とも560億ドル相当の通貨スワップを締結していたのである。

■ 日韓関係が悪化し日韓通貨スワップ協定が終了

日韓関係が悪化した2012年、日韓通貨スワップ協定が終了し、2015年にチェンマイ・イニシアティブに基づく日本と韓国のスワップ協定が満期を迎えた頃から韓国金融界を中心に米国との通貨スワップを求める声が上がりはじめた。

日韓通貨スワップは米ドルまたは日本円で、引き出し後に必要な通貨と容易に交換できるが、他の2国間スワップは中国元など相手国通貨である。韓国は基軸通貨のスワップを求めたが、米国が交渉の席に着くことはなかった。

しかし、新型コロナウイルスの影響で、韓国ウォンに加えて豪ドルやNZドルが10数年来ぶりの安値に下落し、メキシコペソが過去最安値になると、FRBはグローバルでドル調達市場の緊張を緩和させるため、通貨スワップを締結する。対象国は2007年から09年の金融危機時に通貨スワップを締結した各国で、新型コロナウイルスの終焉後に通貨スワップが継続する可能性はほぼないとされる。

■ 総選挙を控え与党支持者の間で日韓スワップに批判の声

韓国金融界や経済界は日韓通貨スワップの再開に期待し、中央銀行も有用性を唱えるが、韓国政府は公式な要請を行なっていない。

韓国銀行は李柱烈総裁を筆頭に日本とのスワップ協定を推進したい考えを示し、丁世均(チョン・セギュン)首相も3月27日の会見で日韓通貨スワップの再開に言及したが、今のところ日本は公式な要請がないスワップを検討する考えはないようだ。

韓国マスコミなど、2国間通貨スワップは両国が恩恵を受けるとしてスワップを検討しない日本を批判するが、日本は基軸国通貨スワップのメンバーであり、日韓スワップは事実上、韓国のみ恩恵を受ける協定となる。

4月15日の総選挙を控え与党支持者の間で丁首相の日韓スワップの必要性発言を批判する声が上がっている。金融界や財界は日韓スワップを要望するが、日本批判をしてきた文政権にとって日韓スワップの要請は諸刃の剣となりかねないのだ。

佐々木和義

最終更新:4/8(水) 19:46
ニューズウィーク日本版

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