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ウイルスに打ち勝つ体をつくるには|ウイルスにもガンにも 野菜スープの力

4/8(水) 6:00配信

幻冬舎plus

前田浩

病気予防に効果的な野菜スープ。そのレシピから、ウイルス・ガンはもちろん、現代社会が抱える問題まで徹底解説した『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』(前田浩著)から、一部を抜粋してお届けします。抗がん剤の世界的研究者による、健康になるための一冊です。*   *   *

はじめに

ウイルスが世界中で猛威をふるっています。2019年12月から始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、終息の兆しなく、東京オリンピック・パラリンピックも延期と決まりました。健康面だけでなく、株価が急落するなど、社会・ 経済にまで及ぶ影響は深刻甚大です。

中国武漢から流行は始まり、日本、ヨーロッパ、アメリカに拡散し、WHOはパンデミックを宣言する事態になりました。重篤な感染者は、肺炎により死亡にいたるため、高齢者や既往症のある人達を恐怖に陥れています。

実は、コロナウイルスには分かっているだけでいくつもの種類があり、軽い風邪の症状だけのものから、2002年に流行したSARS(サーズ、重症急性呼吸器症候群)や2012年に発生したMERS(マーズ、中東呼吸器症候群)など多くの人が亡くなったものまであります。

おそらく、今回のウイルスもコロナウイルスの一種で、しかも新型だったため正体が何か分からないという恐怖が、様々なパニックに拍車をかけたものと思われます。

 

私の専門はそもそも細菌学、微生物学、ウイルス学です。東北大学の学生だった頃、これから研究者として歩んでいくのなら、当時世界のトップランナーだった米国の大学院に行くべきだと考えていました。

当時のカリフォルニア大学大学院の先生がタンパク質の専門家で、彼の元で本格的に研究というものに向き合い、学生時代で一番勉強したといっても良いくらい没頭しました。

師の影響もあり取り組んでいたタンパク質は、その後の私の学究人生に大きな影響を与えてくれました。タンパク質は高分子化合物であり、高分子物質を薬の世界に持ち込んだのは私が初めてとなるからです。

帰国後、東北大学に戻り、医学部大学院の石田名香雄教授の勧めで、インターフェロン(動物の体内で分泌される、ウイルスの増殖を抑えるタンパク質)を研究し始めました。

当時、私がいた研究室では、微生物、特に放線菌というかびに近い微生物に抗ガン物質を産生しているものがいないかも探索していました。そして、菌株の一つが、強力な抗ガン物質を生成することを突きとめたのです。タンパク質を研究してきた私は、放線菌由来の高分子抗ガン物質の研究をさらに進めました。

東北大学での成果が縁となって再び米国に招かれ、ハーバード大学のガン研究所で研究を続けました。数年後帰国、熊本大学に移り、世界初の合成高分子を繋いだタンパク質の抗ガン剤を作ったのです。それが「スマンクス」です。

スマンクス以前の抗ガン剤は、ガン細胞だけでなく健康な細胞をも攻撃してしまうため、副作用が問題となっていました。従来の低分子の薬剤は、ガン組織よりも、全身に均一、かつ健常な組織に多く集まってしまう性質があったのです。

スマンクスはガンの組織だけを、ミサイルのように攻撃するべく設計しました。

ガンの組織には大きな分子(高分子)が集まりやすいということを発見し、必ず 副作用の少ない抗ガン剤の開発に応用できると確信しました。タンパク質の抗ガ ン剤に、さらに合成高分子を結合した薬剤の合成に成功したわけです(1979 年)。

当時熊本大学の同僚の医師から肝臓ガンを検査する造影剤の話を聞き、造影剤にスマンクスを溶かしてみたのです。すると、ガン局所にだけ届き、しかも長く滞留し、著明な治療効果が出てきたのです。

これを末期の肝ガン患者さんに投与したところ、軽快するという奇跡が起こりました。軽快した患者さんの画像を見て、一緒に研究してきた仲間と興奮したのを覚えています。

以上の成果の発表を契機として、高分子抗ガン剤「スマンクス」を求めて、肝ガンの患者さんが世界中から熊本へやってくるようにまでなりました。 

全く新しい抗ガン剤を開発する過程で、そもそもガンはなぜできるのか、ガンと炎症の関係、ウイルスと炎症の関係、そしてこれらに大きく関わっている活性酸素の影響を知りました。次に私は、ひょっとすると抗ガン剤だけではなく、ガンそのものを予防できるのではないかと思い至ったのです。

当時私の研究室ではガン以外に、細菌やウイルス感染でどうして病気が発生するのかという研究も続けていました。その一つがインフルエンザウイルスの感染症発現のメカニズムです。マウスにウイルスを感染させたとき、実はウイルスそのものの毒性よりも、活性酸素が肺炎などの発病の原因になることを発見したのです。

ならば大量に発生した活性酸素がDNAを傷つけ、ガン化の原因になるのではないか、すなわち活性酸素を抑えることができれば、ウイルスにもガンにも打ち勝てるのではないかと考えました。活性酸素を抑える、抗酸化作用のある物質探  しを始めたのです。

色々と試みた結果、抗酸化作用の宝庫は野菜でした。しかも、効率良くたくさん摂るには野菜スープがベストだという結論も得ました。

抗ガン剤、抗炎症剤などの薬で病気を治すのももちろん科学の進歩ですが、そもそも病気にならなければいいわけで、なんとこんなに身近にある食材で、誰でも作れる「野菜スープ」だったのです。

科学者は研究成果を医療関係者だけでなく、一般の人達に直接届ける義務があると私は常々思っていました。本書は野菜スープがなぜ万病の予防に良いのか、様々なデータをもとに、できるだけ分かりやすく説明したつもりです。

特に長期戦になるであろう新型コロナとの闘いには、免疫力を高め、身体の中からウイルスに打ち勝つことが必要です。本書が、切迫するコロナ危機撃退の一助となれば幸いです。

専門家としては言葉足らずのところもありますが、分かりやすさを一番に考え、難しい科学用語などは極力省きました。毎日の野菜スープが、読者の皆さまの健康に貢献してくれることを切に願っております。

 

2020年4月 前田 浩


■前田浩
1962年東北大学農学部卒業/1964年カリフォルニア大学 (Davis 校)大学院修了(フルブライト奨学生)/1968年東北大学大学 院博士課程修了(指導:医学部石田名香雄教授)、東北大学医学部細菌 学講座助手、ハーバード大学ダナ・ファーバーガン研究所主任研究員/1971年熊本大学医学部微生物学講座助教授/1981年同教授/ 2005年熊本大学名誉教授(医学)、同年崇城大学薬学部教授、2011年 同特任教授/2016年同栄誉教授、現在、(財)バイオダイナミックス研 究所理事長・所長/大阪大学招聘教授(医学)、東北大学特別招聘プロフェッサー〈研究テーマと抱負〉高分子型抗癌剤、癌血管の透過性にかかわる現 象の EPR 効果、感染における生体内ラジカルの生成、炎症による生 体内活性酸素と抗酸化食品による癌予防、癌の蛍光ナノプローブに よる検出と光照射療法\n〈受賞歴〉日本細菌学会浅川賞、高松宮妃癌研究基金学術賞、ドイツ生 化学会および国際 NO 学会の特別号発刊により顕彰、王立英薬学会 Life Time Achievement Award受賞、日本DDS学会 永井賞、日本癌 学会吉田富三賞、2016年トムソン・ロイター引用栄誉賞(化学部門)、 米国ミシガン州Wayne State Universityより2017 Roland T. Lakey 賞受賞、2018年瑞宝中綬章受章、西日本文化賞、米国サンアントニオ 市名誉市長、米国オクラホマ州名誉州民など多数〈趣味〉ワイン\n \n 

最終更新:4/8(水) 11:05
幻冬舎plus

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