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商売をたんなる決済にしない「ギブから始まる」事業戦略

4/8(水) 9:16配信

プレジデントオンライン

東京・国分寺に全国から注目を集める地域通貨「ぶんじ」がある。その仕掛人で、カフェのオーナーでもある影山知明さんは、ぶんじを「交換の後味がよくなる通貨」だという。「鎌倉資本主義」を提唱し、地域通貨「まちのコイン」を推進している面白法人カヤックの柳澤大輔さんが話を聞いた――。(前編/全2回)

【写真】(左)面白法人カヤック代表取締役CEOの柳澤大輔さん、(右)クルミドコーヒー/胡桃堂喫茶店店主の影山知明さん

 ※本稿は2020年2月28日に収録された「地域資本主義サロン」での対談をまとめたものです。

■マッキンゼーからカフェ経営者に転身

 【柳澤】今回のゲストは影山さんです。『ゆっくり、いそげ』(大和書房)という本を書かれています。本のオビでは「JR中央線・乗降者数最下位の西国分寺駅―そこで全国1位のカフェをつくった人」と紹介されていますね。

 【影山】ご紹介ありがとうございます。クルミドコーヒーの影山と申します。東京の国分寺市というところでカフェの経営をしています。クルミドコーヒーと胡桃堂喫茶店の2店舗で、もう11年半ぐらいになります。カフェを始める前はマッキンゼー・アンド・カンパニーというコンサルティングの会社にいたり、投資ファンドでベンチャーキャピタリストの仕事をしたりしていました。

 【柳澤】日銭を稼ぐ仕事と普通の人が目にしないような大金を動かす仕事と、ある意味、両極を見てこられたわけですね。

 【影山】そうですね。100円玉をじゃらじゃらいわせて入金するのと、銀行で0の数を数えながら1億円の振込とかをしていた時代と(笑)。カフェを経営していると、グローバル資本主義というものと、僕らが日々のなりわいとしてやっていることは随分性格が違うなっていうのを感じるんです。そのことを自分なりに反芻してたどり着いたキーワードが2つありました。1つは「ギブから始める」ということ、もう1つは「特定多数」です。

■「お客さんに喜んでもらうこと」から始めた

 【柳澤】まず「ギブから始める」について聞かせてください。

 【影山】はい。幸いなことにカフェを始めた当時は、まだその前の投資ファンドの仕事もやっていたので、毎月の売り上げに汲汲(きゅうきゅう)とすることもありませんでした。だから自分の生まれた国分寺をよりよい街にするとか、そこのお客さんに喜んでもらうにはどうしたらいいかをピュアに追求することができたんです。西国分寺にもドトールとかPRONTOとかスタバとかナショナルチェーンのカフェもあるのですが、そういったところの出店する動機とは違うところがありました。特に上場企業だったりすると売り上げを追求しなければならないわけですが、僕らは自分たちの利得ではなく誰かにギブするという発想から始めようと。そこの動機がそもそも違っていたんです。

 【柳澤】街に貢献したいという考えは最初からあったんですか。

 【影山】実は西国分寺っていう街が最初からめちゃくちゃ好きというわけではなかったんです。あんまり期待もしてなかった。でもやっぱりお店をやっていると日々お客さんと出会い、他のお店の方とも知り合っていくので、抽象的な街とか地域というよりも、「あの人とあそこで会った」とか「この人とあの出来事」とか「そのときの景色」といった具体的な記憶の集積としての街っていうのができて、そこへの愛着が育まれていったという感覚です。

■投資ファンドの「利益追求」とは真逆の発想

 【柳澤】じゃあビジネスとしてというよりは、ピュアな思いで実験するという感じだったんですか? 

 【影山】実験というよりは、自分が自分にうそをつかずにやろうっていうことですね。

 【柳澤】投資ファンドという利益追求の考え方と真逆にいってみようと? 

 【影山】そうですね。ベンチャーキャピタルの仕事では10年で合計40社に投資をしました。40社に投資したっていうことは、40人の経営者に会い、40通りの経営の仕方を見てきたということです。うまくいったところもありましたが、法的整理せざるをえなかったところもありました。そのなかで、こういうやり方はいいなとか、こういうやり方は嫌だなという両面を学ぶ機会が多くあったんですね。そのなかから、僕がやるんだったらこれかなっていうのを多分自分なりに考えていたということはあります。ギブするといっても「自己犠牲に基づいた利他主義」 ではなくて、お客さんがよろこんでくれることは結果としてお店の売上にも返ってくるということです。ギブは報われるんです。

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最終更新:4/8(水) 9:16
プレジデントオンライン

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