定年退職後、家庭や地域で孤立しないためにはどうすればいいのか。心理カウンセラーの下園壮太氏は、「そのためのコツは3つある。いずれも50代から始めることが大事だ」という――。
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※本稿は、下園壮太『50代から心を整える技術』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
■“残念なシニア”にならないために
今まで人生の中心は仕事だった。組織の中で人間観を培ってきた。それは、決して無駄なことではありません。発生する問題を解決し、適材適所で人を活用し、期限内にタスクをこなすことで、あなたの価値観は形成されてきました。
一方、定年以降は、あなたが暮らす環境ががらりと変わっていきます。人は1人では生きていけません。家族や地域、趣味のコミュニティでの人間関係をあらためて築くことにもなります。新たな居場所を開拓する際には、初めての人と関わる機会も増え、もっと歳をとると、人に頼らざるを得ない生活がやってきます。
だからこそ、あなたの「価値観2.0」を、これから生み出す必要があるのです。
今、人というものについて等身大で理解する御利益は大きい。“残念なシニア”になり、たえずイライラしていたり、孤立したり、むなしさしか感じない生活は苦しいものです。周囲に呪いや憎しみをまき散らす、『もののけ姫』に出てきたタタリ神のようになりたくない。そのためにも、これまでの経験でカチカチに固まっている価値観を、いったん、ほぐしなおしてみましょう。
価値観の修正は大きな課題です。それを行うにはモチベーションとまだ修正できる余地が必要です。幸運なことに、50代には価値観ほぐしを練習できる場がたくさんあります。
■不安はモチベーションだ
うつからのリハビリのときに、人は「死ぬほどつらい」という経験を繰り返すからこそ変化のモチベーションが高く、しかも何度も襲ってくる不安の波のたびに練習ができるので大きく価値観を変えられる、というケースがあります。
50代のあなたの今の不安はモチベーションになります。また一筋縄ではいかない社会の「現場」にいる今だからこそ、あなたは多くのトレーニング機会が持てるのです。自分が仕事でやらかしたミス。記憶力の低下。あまり働かない部下への苛立ち。モチベーションにあふれているように見える同僚への嫉妬心。
仕事を離れても、地域のトラブル、介護や子育ての問題、パートナーや家族とのいさかい、疲れが抜けない自分への自信低下──。
怒りの感情に乗っ取られそうになったり、立ち直れないほど落ち込んだり、シビアな状況のときこそ、価値観ほぐしの練習です。場数を踏むほど、価値観は柔らかくなっていきます。その練習ができるのが、50代なのです。これから歳を重ねるにつれ、どうしても、価値観が固くなり、効果にも限度が出てきます。
ああ、どうして今こんなことが起こるかなぁ、とうんざりしたら、
「人は、困ったときにしか大切なことを学べない」
この言葉をつぶやいてみてください。そして、「練習、練習」と取り組んでください。
50歳は価値観ほぐしのまたとないチャンスなのです。
■職場での立ち位置も変えていける
「その日の汚れ、その日のうちに」のように、その日起こったトラブルを自分でとらえなおすことができる。価値観をほぐすと、疲労や感情への価値観も変わるため、自分のケアを後回しにしていた人が、その場で自分をケアできるようになります。すると、心も体も疲れにくく、リカバリーしやすくなるのです。
職場での立ち位置も変えていけます。「完投型のピッチャーになりたかったけど、ここぞというときに活躍する抑え投手的立場もなかなかおいしい」と、与えられた持ち場の楽しみを見つけられるようになります。
「人はこうあるべきだ」という価値観をほぐせば、変化があっても、予想外の出来事が起こっても、寛容になり、おおらかでいられます。老後に向けて広げておきたい心地よい人脈も、自ずと広がっていくでしょう。
よし、価値観をほぐすぞ! と、決意してもすぐにほぐれるものではありません。実は、これは相当、地道な作戦となります。「簡単じゃないのが、定年後の人生」。徐々に少なくなっていくエネルギーを切り詰めながら進む「撤退戦」の中でのメンタルワークです。でも、安心してください。50代からの「価値観ほぐし」というミッションを成功に導きやすくするコツをお教えしましょう。
最終更新:4/8(水) 15:16
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