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「なめんじゃねえぞ!」ブラック弁護士事務所の知られざる「闇」

4/8(水) 7:01配信

現代ビジネス

 「てめえ、なめんじゃねえぞ!」――。

 こう怒鳴る声と同時に、ドーンと革靴で事務机を蹴る音が事務所内に響く。声を張り上げる年配の男は、仕立てのいいスーツ姿、だが、すこしくたびれている。襟には大き目の金バッジが光っている。もっともそのバッジはメッキが剥げ、パッと見、いぶし銀色に見える。それが彼のこの世界で生きてきた時間と来し方を物語っているかのようだった――。

【写真】衝撃…ブラック弁護士の「ヤバすぎる実態」とは?

 まるで暴力団の組事務所を思わせるこの光景は、令和の現代、それも東京都内の弁護士事務所での一コマである。声の主は、弁護士事務所の経営者弁護士、れっきとした法律家だ。

 この弁護士という職業を、ある人は、「かつてこそ武士だったが、今はビジネスマンだ」と言い、ある人は、「社会が認め国家による裏付けがあるヤクザだ」と言う。

 武士にビジネスマン、そしてヤクザにしろ、怒鳴るには何がしかの理由がある。大抵は、仕事上でのミスか、あるいは自尊心を傷つけられたかだ。冒頭部で紹介した弁護士事務所の所長、ボス弁(経営者弁護士)が怒鳴った理由は後者だった。新人弁護士から、「そんな法律や判例はありませんよ」とたしなめられたことに端を発する。

 高い倫理観を求められる弁護士事務所でも、ブラック弁護士事務所と呼ばれるそれでは、マネジメントサイドに立つボス弁やパートナー弁(共同経営者弁護士)が、新人弁護士や依頼者を煙に巻くため、あるいは自らを大きく見せるため、そもそも存在しない法律や判例を物知り顔で語ったり、見る人が見れば、あり得ない法律構成を述べたりすることは珍しくはないという。

 そうした話は、ブラック弁護士事務所に勤務経験のある若手、中堅弁護士何人かから耳にする。今では、そんな話も弁護士界隈では、さほど驚くことのない話のようだ。

熾烈な新人弁護士獲得競争

 冒頭部で紹介したエピソードを教えてくれたのは、昨年まで、東京都内のブラック弁護士事務所に勤務していた若手女性弁護士である。

 法曹を数多く輩出している名門大学卒、法曹養成機関である法科大学院をすっ飛ばし、「予備試験」を経て、司法試験にも上位で合格したという弁護士界のエリートだ。

 裁判官、検察官、弁護士の法曹三者の世界では、司法試験合格順位が高ければ高いほど、その進路の選択に幅が拡がるという。

 昔も今も、成績上位の者なら、裁判官にも、検察官にもなれる。企業間の国際法務案件やM&Aを手掛ける渉外系と呼ばれる大手法律事務所はもちろん、首都圏や京阪神地区の老舗事務所からも就職への誘いが引く手数多だ。

 もっとも弁護士の数こそ、2019年には過去最高の4万1118人を記録したものの、新人弁護士数は、ここ数年来、司法試験合格者数は1500人程度と減少傾向にある(出所:『弁護士白書』2019年版)。

 こうした背景から、今では、新人弁護士の就職戦線は売り手市場、かつてのバブル期を彷彿とさせる熾烈な新人弁護士獲得競争が、事務所規模を問わず、弁護士事務所間で繰り広げられているというのが実情だ。

 かつてこそ司法試験上位合格の新人エリート弁護士は、大手や老舗と呼ばれる著名弁護士事務所へ――、というのが黄金コースだった。だが、新人弁護士数が増えてきた2008年頃から数年続いた「弁護士就職冬の時代」を境に、これが変わってきたという。

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最終更新:4/8(水) 7:01
現代ビジネス

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