● 国内の連帯は強まるが 国外には遠心力が働く懸念
先進国では過去30年間、グローバリゼーションが進展するもとで経済格差が拡大し、政治的分断も広がった。
今回の新型ウイルス危機は、社会のあらゆる階層に多大な打撃を与えるが、そうだとすると、1930年代の大恐慌と同様、人々が共同体的な紐帯に強く目覚め、所得再分配を見直したニューディール的な政策が選択される可能性はないのだろうか。
その一方で懸念されるのは、国境の内側で求心力が働くとしても、国境の外側に対しては強い遠心力が働き、むしろ国際的な分断がさらに広がることだ。
● グローバル化で中間層が瓦解 所得再分配機能が弱体化
この30年余り、グローバル化の進展とともに、オフショアリングが進んだ。1990年代以降、先進国の製造業が生産工程を新興国にシフトさせたのである。
かつては、工業国と言えば先進国を意味していた。工業化はフルセットで行う必要があり、新興国が工業国となるのは相当に難しかったためだ。
それでは、なぜ新興国へのオフショアリングが可能となったのか。
それは90年代後半以降のITデジタル革命によって、国境をまたいでアイデアを移動させ、海外でも生産管理を行うことが可能となったからだ。
先進国の製造業は、新興国の安い賃金と自らのノウハウを組み合わせ、グローバルで効率的な生産を追求できるようになった。
当初、労働集約的な生産工程を海外に移転させることは、経営面だけでなく、経済学的にも、そして政治学的にも望ましいと考えられていた。収益性の高い企画や研究開発、アフターサービスを国内に残し、収益性の低い労働集約的な組立工程を新興国に移すのだから、みんながハッピーになれるはずだった。
しかし、組立工程のシフトは中間的な賃金の仕事の消滅を意味し、先進国では低い賃金と高い賃金の仕事への二極化が進んだ。
一国の付加価値生産の内、製造業が占める割合は1~2割しかないが、同じような現象が非製造業でも生じた。ITデジタル革命によって、さまざまな業界で労働節約的なイノベーションが進み、中間的な賃金の仕事が消滅したのである。そして中間層は瓦解した。
一国だけがグローバリゼーションを否定すると、大きな災いに直面する。各国政府は、グローバリゼーションと折り合いをつけるべく、従来の社会契約や社会規範を修正していった。
逃げ足が速いグローバル企業や富裕層を自国につなぎ留めるべく、法人税率や所得税の最高税率の引き下げ競争が行われた。この結果、各国の所得再分配機能は著しく弱体化した。
高所得者がより大きな負担を担うのではなく、低所得者や中所得者は自らが社会保障の財源を賄わざるを得なくなっていったのである。
低所得者や中所得者への税負担をさほど増やすことができなかった日本では、財政赤字に頼ることで、つじつま合わせが続けられてきた。
● 中道政治勢力が衰退 二極化と分断が進む
これらの結果、多くの先進国では中間層にサポートされてきた中道派の政治勢力は後退、保護貿易や反移民政策、反EU政策を訴える政治勢力が台頭した。
長年培ってきた社会契約や社会規範の変更を迫るグローバリゼーションに対し、強い反発が広がったのである。
また、ITデジタル革命は経済格差を助長しただけではなく、自らが好む情報ばかりを供給するソーシャル・ネットワーク・サービスが人々に広く、そして深く浸透することを通じ、社会や世界の分断を助長した。
保護貿易を掲げるトランプ大統領の誕生や英国のブレグジット国民投票は、わずか4年前の2016年の出来事だ。
そして、もう一つ、オフショアリングを背景に、経済力を著しく増した中国に対するリベラル資本主義国家の安全保障上の警戒感も相当に強まった。
最終更新:4/8(水) 16:20
ダイヤモンド・オンライン































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