―[インテリジェンス人生相談]―
“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロ・佐藤優が、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
★相談者★ 脱感染(ペンネーム) 無職 男性 65歳
COVID-19の市中感染の拡大を受けて、学校の休校やイベントの自粛要請、中韓からの渡航制限などを行う安倍政権を、野党が批判していました。東日本大震災後の福島第一原発事故処理が後手に回ったあなたたちが言えることか?と思ってしまいます。幸いにも中韓、イタリアなどと比較して日本の感染者は少ないまま(人口100万人当たりの感染者数)です。
これは、安倍政権の感染対策が一定の効果を上げているからではないでしょうか(検査が行き届いていないからという批判があることも承知していますが)。であれば、今こそ与野党協力して、未知のウイルス蔓延に対応して、世界でいち早く経済的な回復を目指すべきではないでしょうか? 佐藤さんがどのように安倍政権の対応を評価されているのか伺えましたら幸いです。
◆佐藤優の回答
私もあなたと同じ考えです。’11年3月11日の東日本大震災のとき、首相は民主党の菅直人氏でした。当時野党だった自民党と公明党は、政争を一時停止し、震災対策に関しては政府に全面的に協力しました。そのことが’13年に自公による政権奪還の下地をつくったと思います。
それに比較すると、現在の野党の対応は新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込めるために政府と協力する姿勢がまったく見られません。野党が与党を攻撃するのは仕事です。
しかし、WHO(世界保健機関)がパンデミックであるとの認識を表明したウイルスの感染拡大が封じ込められるまでは、「桜を見る会」の問題や東京高検検事長の定年延長問題は、とりあえず脇に置いて政治休戦するのが筋と思います。
冷静に考えた場合、致死率だけで見るならば今回の新型コロナウイルスによる肺炎の脅威はそれほど大きなものではありません。’18年に季節性インフルエンザで亡くなった人は3325人です。それに匹敵する死者を新型コロナウイルスがもたらすとは思えません。
ただし、新型コロナウイルスに対する国民心理や国際社会に与える影響、経済的打撃などを総合的に判断すれば現状は確かに危機的です。
このような状況に安倍晋三首相と官邸官僚はよく対応していると思います。ただし、政府やマスメディアは、ある種の「自己限定」をしてしまって、危機に十分対応することができていません。田坂広志氏は「自己限定」についてこんな説明をしています。
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「自己限定」が、我々の力の発揮を妨げ、ときに、無残なほど萎縮させてしまっているのである。分かりやすい例を挙げよう。
例えば、いま、チョークで地面に30センチ幅の二本の線を引く。そして、誰かに「この線の内側を歩いてください」と言えば、健常者であれば、誰でもその線を踏み外すことなく歩ける。しかし、もしそれが、断崖絶壁の上に架けてある30センチ幅の板の橋であったならば、我々は、「落ちたら死ぬ」「こんな橋、歩けない」と思ってしまい、その瞬間に、足がすくんで一歩も踏み出せなくなる。
このように、我々は、「自己限定」の意識が心を支配した瞬間に、本来持っている能力を無残なほど発揮できなくなるのである。(『直観を磨く――深く考える七つの技法』149頁)
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まさに現状は、「断崖絶壁の上に架けてある30センチ幅の板の橋」を歩いているような状況です。この状況に安倍首相や今井尚哉首相補佐官たちは冷静に対応し、橋を渡ろうとしています。私たち一人一人もパニックに陥ってトイレットペーパーやティッシュペーパーを買い占めるようなことをしてはいけません。今秋以降、厳しい経済的落ち込みに日本は直面します。そのような状況で民主的手続きによって選出された首相を信頼し、国民が団結し、経済復興に取り組むことが何よりも重要になります。
★今週の教訓……東日本大震災のとき自公は政争を停止した
―[インテリジェンス人生相談]―
【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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最終更新:4/8(水) 15:51
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