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新型コロナに翻弄される中国「ガバナンスと経済のジレンマ」

4/9(木) 8:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

2020年1月末から中国武漢市を源とする新型コロナウイルスの感染が拡大中だ。世界を牽引する中国経済がどこまで減速するのか、各国が固唾を飲んで見守る一方、中国当局は、経済活動の制約による早期の感染拡大抑制を迫られつつも、経済の減速を回避したいジレンマに直面している。感染拡大の収束が不透明な現在、経済だけでなく、政治面の影響にも注視が必要だ。なお、本稿は原則として3月初めに作成したものであり、また、筆者自身の個人的見解、分析である。

中国当局が成長率の下押し圧力を懸念する、2つの要因

2020年1月末の春節前から、中国武漢市を源として新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大しているが、これによって、世界経済全体にも大きな影響を及ぼす中国経済がどの程度減速することになるのか関心が集まっている。現状、中国当局は経済活動を制約して早期に感染拡大を抑え込む必要があると同時に、できるだけ経済の減速は回避したいというジレンマに直面している。

3月初め時点、感染拡大がいつ完全に収束するのかなど、なお多くの不確実要因があり、経済への影響については見方に大きな幅がある。また政治面への影響も注視していく必要がある。

中国当局が特に、COVID-19の成長率に対する下押し圧力を気にする大きな要因は2つある。

第1は、習近平政権下で策定され本年に最終年を迎える現行第13次5ヶ年計画(十三五規画、2016~20年)が、期間中の成長率目標を「年平均6.5%以上」と設定していることだ。2016~19年実績(6.8%、6.9%、6.7%、6.1%)から単純平均で計算して、目標を達成するために必要な20年成長率は6.0%以上で大きな問題はなく、十三五規画の中心的目標である「全面的小康(ゆとりある)社会建設」の完了がほぼ実現するはずだった。

習主席は3月の党政治局常務委でもたびたびこの目標に言及し、「実現する勝負どころ(実現決勝)」として、目標達成に意欲を示している。しかし、2019年四半期別成長率の減速が顕著で(6.4%、6.2%、6%、6%と推移)、そもそもCOVID-19の感染拡大前から、海外のみならず中国内の専門家や政府系シンクタンクの間でも、5%台成長の時代に突入するとの見方が出始めていたところだっただけに、成長率に対する新たな下押し圧力の出現は、実現可能と見られていた十三五規画の成長率目標を脅かす要因として警戒されている。

第2は、本年までに総GDPと1人当たり収入を実質ベースでいずれも2010年比「翻一番(倍増)」させるという政策目標だ。類似の目標は古くからあり、中国当局は歴史的にこうした形の目標設定を好んで用いてきた。第13回党大会は(13党大、1987年)、経済建設段階を3つに分けた「三歩走」と呼ばれる総体基本戦略を提示したが、その第1段階として1990年GDPを80年比倍増、第2段階として20世紀末GDPを90年比再度倍増させるとの目標を設定、これらはいずれも前倒し達成された。

現在の政策目標に直接関連するのは、胡錦濤政権時代に設定された「両個(2つの)翻一番」、つまり、総GDPと1人当たり収入を共に2010年比で倍増させるとの目標である。

習政権下で開かれた19党大(2017年)での習報告はこの数値目標に言及しなかったが、これについて当時、党関係サイトは「これまではその時の発展段階を考慮してこうした目標が決定され、またそれが必要でもあったが、現在は高成長から質の高い成長に転換する局面に入っており、(数値目標に言及しなかったのは)各方面の注意を発展の質や効率、不均衡の解消に向けるため」と説明している(2017年12月14日付党中央紀律検査委員会監察部網)。

党内外では、上記十三五規画、および19党大での習報告でうたわれている「全面的小康社会建設完了」の具体的な条件が「両個翻一番」目標の達成であると認識されている。2011年以降の実績から計算すると、目標実現には、2020年総GDPは5.6%強、1人当たり収入は10%強成長する必要があり(収入が具体的にはどの統計を指すのか不明のため、1人当たりGDPで代用計算)、1人当たり収入目標はもとより、最もハードルが低いと見られていた総GDP倍増実現にも黄信号が灯っている。

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最終更新:5/20(水) 15:24
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