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中国が「新型コロナに勝利」を強調する事情

4/9(木) 5:40配信

東洋経済オンライン

 新型コロナウイルスの脅威は、アジアから欧米へと急拡大している。

 その最中の3月12日、中国外交部(外務省)の趙立堅・副報道局長 が「新型コロナウイルスを武漢に持ち込んだのはアメリカ軍かもしれない」とツイッターで発言し、物議を醸した。

 趙氏の発言にはもちろん根拠がなく、支離滅裂に見える。しかし、この行動は中国政府が進めている情報戦略と符合する。中国は「国内への宣伝」と「国外への宣伝」という2本柱の戦略を用いて、「コロナに打ち勝った強国」というイメージ作りに向けて動き始めた。

■習近平主席が武漢を訪問

 2020年2月、中国国内で新型コロナウイルスが猛威をふるい、各都市がロックダウンされていた頃のことだ。中国では政府の初動の不手際や隠蔽疑惑がささやかれていた。さらに、新型コロナウイルスを武漢で真っ先に告発した医師・李文亮氏の死が重なり、中国国民の間に強烈な不満がたまっていた。

 だが、そのわずか1カ月後、国営・新華社系列のメディアをみると、記事には「私の治癒日記」「感染症との戦いから学んだこと」「コロナから世界を守るために、今こそ中国が手を差し伸べよう」など、ポジティブな論調が目立つ。

 このような情報をメディアで発信することは、中国における新型コロナウイルスの流行が落ち着いていることが背景にあり、同時に感染症との戦いの経験が「外国に求められているのだ」というイメージを広げようとする狙いもある。

 データをみると、中国の確定患者数は減少している。3月9日には李克強首相が「中国国内のコロナの流行は改善している」と述べた。3月10日には習近平国家主席が武漢を訪問。国営メディアは「主席が最前線を視察した」と報じたが、トップの武漢訪問で新型コロナウイルスへの完全勝利に向けての基礎固めを始めた。

 中国国内で「勝利宣言」の宣伝が行われることは、中国政府に不信感を持った民心を取り戻す狙いがあったようだ。

 中国の初動の遅れや情報の隠蔽工作疑惑を非難する声は、国外からも数多く出ていた。それを変えたかった中国にとって、プラスに働いたのが新型肺炎の正式名称だ。WHO(世界保健機関)は新型コロナウイルスを「2019-nCoV」と命名し、「武漢ウイルス」や「武漢肺炎」という俗名がなくなった。新しい名称は、ウイルスの発生源と中国との関係性を表面的には薄めることになった。

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最終更新:4/9(木) 5:40
東洋経済オンライン

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