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新型コロナウイルス感染時のイブプロフェン服用、その安全性を巡る混乱はなぜ起きたのか?

4/24(金) 12:14配信

WIRED.jp

世界保健機関(WHO)は3月半ば、新型コロナウイルスに感染している可能性がある場合は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のイブプロフェンを自らの判断では服用しないように呼びかけた。一部の専門家が同様の見解を示していたこともあり、この情報は瞬く間に世界中に広まった。ところが、WHOは数日後にこれを撤回したのだ。

「アビガン」は新型コロナウイルスとの闘いで人類を勝利に導くか

ネットでは解熱剤としてイブプロフェンを服用することの安全性について、ちょっとした議論が巻き起こった。今回の騒ぎは、パンデミック(世界的大流行)においてどのように自分の身を守るかだけでなく、わたしたちがニュースをどう消費するかを考える上で重要な教訓となるだろう。

各国の政府や医療当局は、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の軽症者に対しては、病院には行かずに自宅療養するよう求めている。わざわざ薬局に行かなくても、たいていの家にある市販薬が使えるなら、もちろん便利だろう。また、イブプロフェンの代替品としてアセトアミノフェンが推奨されたが、研究者たちはアセトアミノフェンに副作用がないわけではないと警告する。

イブプロフェンを使わないようにという情報を広めた人は善意でそうしたのだろうが、偏見のない冷静な判断が働かず、また情報が正確ではなかったことで裏目に出てしまった。誰もが身近にあるもので感染を防ごうとする状況で、わたしたちはパンデミックが引き起こすストレスが誤った情報を拡散してしまう様子を目の当たりにしたのである。

すべては臨床報告に基く仮説から始まった

イブプロフェンを巡る議論が始まったのは、3月11日のことだった。スイスのバーゼル大学病院とギリシャのテッサロニキ・アリストテレス大学の研究者たちが共同で、医学誌『The Lancet Respiratory Medicine』に仮説を発表したのだ。

研究者たちは中国のCOVID-19の重症患者約1,300人を対象にした3件の臨床報告に基づいて、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と呼ばれる酵素が重症化に関係している可能性があると推測した。なお、この1,300人のうち12~30パーセントには、既往症として高血圧と糖尿病があった。

新型コロナウイルスは、ACE2受容体を利用して人間の細胞に侵入する。つまり、この酵素がよく作用するようになると、症状が悪化する恐れがあるというのだ。

一方、高血圧と糖尿病の治療にはアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを抑える作用のあるACE阻害薬が使われるが、この薬はACE2の酵素作用の発現を加速させる。高血圧患者や糖尿病患者が重症化しやすいのは、ACE阻害薬を服用しているためではないかというのが、研究者たちの立てた仮説だった。

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最終更新:4/24(金) 12:14
WIRED.jp

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