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3密ではない登山を今なぜ自粛しなければならないか

4/30(木) 12:01配信

JBpress

 4月20日、山岳4団体(日本山岳・スポーツクライミング協会、日本勤労者山岳連盟、日本山岳会、日本山岳ガイド協会)は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、「山岳スポーツ愛好者の皆様へ」として、登山やクライミング行為などの山岳スポーツを自粛するよう、共同声明で呼びかけた。

 登山業界を盛り上げていく立ち位置にあり、特に登山愛好者の3協会と立ち位置の違う職業プロフェッショナルの集まりであるガイド協会が共同で声明を出したことは、新型コロナに対する業界の危機感を如実に表している。ゴールデンウィーク前に出したこのタイミングも含めて、登山者の自粛を呼びかける方法として、最適であった。

■ 山小屋も次々と休業を決定

 危機感を持っているのは、業界団体だけではない。八ヶ岳では、11月まで山小屋の休業を決めた小屋もあり、富士山も吉田口、富士宮口では全山小屋一斉に今夏の休業を決めた。皆、身を削って、決断している。山小屋にとって、ひと夏休むということは、来年まで売上ゼロを耐えるということだ。それでも、新型コロナのクラスター源となることを危惧している。

 ただ、確かに山小屋は3密だが、通常の山歩きであればいいのではないかと考える人がいるのも事実。実際、4団体の声明に同調した登山家の野口健氏に対し、ホリエモンが、頭悪すぎて笑うと返したことがニュースになっている。

 それでも、自粛しなければならない。3密ではないとか、感染の可能性が低いとかという問題ではない。自粛しなければならない理由は、受け入れる側のインフラを一撃で壊滅させる恐れがあるから、だ。そして、その影響は計り知れず大きくなる可能性がある。

■ 遭難男性のコロナ疑いで救助隊員らが一時自宅待機に

 実際危惧していたことが、4月25日、八ヶ岳で起こってしまった。

 八ヶ岳・阿弥陀岳で滑落し、手首を骨折した都内在住の男性が病院搬入後、CT検査で新型コロナウイルス感染の疑いが浮上した。その後のPCR検査で陰性との結果が判明するまで2日間、救助に当たった県警山岳遭難救助隊員ら10人前後が自宅待機を余儀なくされたのだ。

 登山に限って言えば、幸いこの間に長野県内にヘリが必要な遭難者は出なかった。そのため、2日間の待機に実害は出なかったといえる。しかし、仮に陽性で、2週間の待機期間を取らなければならなかった、となった場合を考えると、この事故のために救えなかった命が出たとしても不思議ではない。

 そして、警察のヘリというのは、登山者のためだけのものではない。社会的インフラを2日間止めてしまったことの重大さは重く受け止める必要がある。

■ カナダでは危惧していたことが現実に

 実は1カ月前の3月末、カナダでは似たような事例が起こっている。

 ハイキングしていた人が凍ったトレイルで足を滑らせて怪我をし、救助を要請。そのハイカーは病院で怪我の治療を受けたのだが、その後、コロナ検査で陽性と判断され、救助に関わった救助隊員、ヘリのパイロット、救急救命士の全てが2週間の隔離を余儀なくされ、救助隊の機能が著しく低下したのだ。

 そして、この事例が、国立公園の閉鎖に進んで行く一つの引き金になったそうだ。

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最終更新:4/30(木) 13:25
JBpress

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