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エボラ治療薬「レムデシビル」は、新型コロナウイルスの“特効薬”になりうるか

5/3(日) 12:10配信

WIRED.jp

新型コロナウイルス(正式名称は「SARS-CoV-2」)が、中国の国外に広がり始めた1月下旬から2月上旬のことだ。ネブラスカ州オマハにあるネブラスカ大学医療センターで働く感染症専門医のアンドレ・カリルは、オフィスで米国立衛生研究所(NIH)の研究者と電話や電子メールのやり取りをする時間が増えていった。

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この呼吸器系に致命的な影響を及ぼすウイルスに対して効果のある治療法やワクチンは、まだ存在していなかった。このためNIHは、最も有望な治療薬候補の臨床試験を開始することを熱望していた。

最初の候補は、米国に本社がある製薬会社ギリアド・サイエンシズが開発したエボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」だった。NIHは、その臨床試験をカリルが指揮することを望んでいた。

NIHがカリルを選んだ理由は2つあった。ひとつは、カリルが2014~15年に西アフリカで発生したエボラ出血熱のアウトブレイク(集団感染)の際にエボラ出血熱治療の珍しい臨床試験に取り組み、公衆衛生危機の最中に実験薬を評価する新しいモデルを作成したことである。ふたつ目は、世界で最も感染力の高い致命的な感染症の患者のために指定された全米10カ所の治療センターのうち、最大のネブラスカ大学医療センターの生物学的封じ込め施設にカリルがアクセスできたことだった。

米国では当時、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の患者はほんのひと握りしかいなかったが、遅かれ早かれ患者数は増加し、患者はおそらくオマハに送られることになるとカリルは理解していた。「ここはアウトブレイク中に他国から米国民の患者を受け入れられる国内で数少ない治療センターのひとつなので、単に時間の問題だろうと考えていました」と、カリルは『WIRED』US版のインタヴューで語っている。

そしてカリルの予想通り、2月17日に13人の米国人が到着した。時差ぼけ状態で疲労困憊し、新型コロナウイルス感染症に感染しているか感染の疑いがあった人々だ。この13人は不運な大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の船上で2週間以上の隔離生活を送ったあと、政府がチャーターした貨物機で日本からの10時間の飛行を耐え忍んで避難してきたばかりだった。

わずか1週間後、クルーズ船患者の3人が、米国で初めて新型コロナウイルス感染症に対する実験的な治療を評価する米国政府主導の臨床試験に最初の参加者として登録した。3人は10日間、1日2時間、透明な液体を静脈内に注入された。この液体はレムデシビルまたは生理食塩水のプラセボ(偽薬)で、参加者はどちらが投与されるか知らなかったし、担当医師も知らなかった。レムデシビルは新型コロナウイルスの遺伝構成単位になりすますことで、ウイルスの複製を妨害することが期待されていた。

ネブラスカ大学医療センターの研究者は、各患者の反応を示す測定値を注意深く収集した。新型コロナウイルス感染症は広まり続け、最終的には米国の68を超える病院および欧州とアジア21か国の病院の1,000人を超える新型コロナウイルス感染症患者から収集された同様のデータに、それらの情報が追加されることになった。

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最終更新:5/3(日) 12:10
WIRED.jp

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