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コロナ禍でスウェーデン政府への「大批判」が「信頼 」に変わっていった4つの理由

5/14(木) 15:05配信

たまひよONLINE

世界中で猛威をふるい続ける新型コロナウイルス。多くの国は「ロックダウン」に踏み切る中、独自路線をとっているのがスウェーデンです。感染者は増えているものの、お店は営業を続けており、子どもたちは学校へ通っています。

できるだけ「国民の日常」を保ちながらの対策が行えていることには、「国」が国民を信頼していることが大きく関係しているのではないか 。そう述べるのは、スウェーデンで子育てしながらで翻訳家・教師として働く久山葉子さん(前回記事:スウェーデンの独自コロナ対策、キーワードは「信頼関係」か)。
今回は逆に、「国民」が国を信頼している理由」について綴ってもらいます。

※この記事は2020年5月7日時点の情報です。

【久山葉子(クヤマヨウコ)】
1975年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部英文科卒業。スウェーデン在住。翻訳・現地の高校教師を務める。著書に『スウェーデンの保育園に待機児童はいない(移住して分かった子育てに優しい社会の暮らし)』を執筆、訳書にペーション『許されざる者』、マークルンド『ノーベルの遺志』、カッレントフト『冬の生贄』、ランプソス&スヴァンベリ『生き抜いた私 サダム・フセインに蹂躙され続けた30年間の告白』などがある。

コロナ初期の混乱期

前回、スウェーデンのコロナ対策は国と国民の信頼関係で成り立っていると書きましたが、今回はなぜ国民が国を信用するようになったかについて分析してみたいと思います。
新型コロナウイルスというかつてない脅威が入ってきたとき、スウェーデンでも何をどうすればいいのか意見が分かれ、正直何が正しいのかさっぱりわからないというのが皆の本音だったと思います。

 この国には疫学者という専門家がいて、公衆衛生局や社会庁といった組織があります彼らはコロナほどの規模ではないもののこれまでに世界各地で発生した感染症に対応し、パンデミックに備えて知識やデータを蓄えていました。わたしは恥ずかしながらそんな備えをしてくれている人たちがいることも知らなかったのですが。彼らが大々的に登場する必要がなければないで、世界は平和だったということなのでしょう。ただ、この専門家や省庁の言うことをどこまで信用していいのか。そこもよくわからないまま、コロナは広がっていきました。
特に国民の不安が高まった時期が二度あったように思います。一度目は、三月半ば。周辺諸国が次々と国境を閉じ、義務教育課程の学校を休校にしたときです。休校はしない、と最後までスウェーデンと一緒に頑張っていたイギリスもついに脱落。休校とロックダウンに転じました。

その後、イギリスでは死者数が激増しているという恐ろしいニュースが入ってきて、スウェーデンにいるわたしたちも明日は我が身かとパニック寸前。なのにスウェーデン政府はロックダウンもしなければ、義務教育を休校にもしません。「なぜさっさとロックダウンしない! もう手遅れになる!」新聞紙面でも連日そんな批判が躍り、二千人もの学識者が連名で政府に抗議を申し入れたほどです。なんの専門知識もないわたしたち市民は、誰の言うことを信じていいのかわからず、とても不安でした。

二度目に不安が高まったのは、四月頭に死者数が百名を超えたとき。スウェーデンの人口は日本の約12分の1だと言えば、その恐怖を想像してもらえるでしょうか。そのときにも22人の研究者たちが連名で抗議の手紙を大手朝刊紙に投稿。新型コロナ対策の中心人物となっている国家主席疫学者のことを「能力に欠ける役人」とまで呼んで、政策を批判しました。22人の中には日本でも著書『「やさしさ」という技術』で知られる高名な研究者ステファン・アインホルン博士も名を連ねており、「こ、こんな偉い先生までが声高らかに批判するなんて、やはりスウェーデンはやばいのだろうか?」とわたしも不安になったものです。

しかし五月頭現在、スウェーデンは精神的にかなり落ち着いています。タブロイド紙の見出しも一時はコロナ関係のことばかりでしたが、有名人のスキャンダルや殺人事件の話題が戻ってきました。政府の支持率も三月、四月と上昇を続けています。この状態に落ち着くまでに、政府はいかにして国民の信頼を得てきたのでしょうか。

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最終更新:5/14(木) 16:25
たまひよONLINE

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