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【全訳】米露の“知の巨人”による連名の論説 新型コロナで再注目「ベーシックインカム」の可能性と課題

5/18(月) 19:00配信

クーリエ・ジャポン

世界恐慌以来とされる経済危機で注目されている「ユニバーサル・ベーシックインカム」。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対する経済的な緊急措置として取り入れることは可能なのか。そもそも、その財源はどこにあるのか。

アメリカの大御所エコノミスト、タイラー・コーエンとロシアの知の巨人ガリル・カスパロフが連名で米経済メディア「ブルームバーグ」に寄稿した論説を全訳でご紹介する。

ベーシックインカム賛成論の前提条件とは?

「ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)」は、新型コロナ前から米国で話題にはなっていた──ただし、あくまで理論上の話としてだ。ベーシックインカムは特定の状況に対処するため考え出された。いまパンデミックが映し出しているのは、その状況の悲惨な“予告編”だ。そして、重大な留保は多少あれど、新型コロナのおかげで、ベーシックインカムは前より良く見えるようになっている。

数ヵ月前まで、ベーシックインカム賛成論の根拠は、自動化と生産性向上の速度が雇用創出の速度よりも速く伸びるだろうという予測だった。

人工知能(AI)の発達は、ホワイトカラーおよびサービス産業の労働者が大量にレイオフされる前兆だとしてよく引き合いに出されてきた。こうした懸念のほとんどは、誇張されたものだ。とはいえ話は膨らみ、テクノロジーに対する破壊的な「ラッダイト」(機械打ち壊し)の反乱が起こるよりは、ベーシックインカムがあったほうがよいだろうという発想が出てきたのだ。
このパンデミック中の雇用創出の速度は、多くのベーシックインカム賛同者が恐れていたほどに遅い。パンデミック渦中で雇用が劇的に伸びそうな医療業界でさえ、不振だ。この医療分野のGDP喪失は、アメリカで景気後退が即座に起こった大きな一因でもある。

ヨーロッパ式の賃金保証か、米国式ベーシックインカムか

世界恐慌以来の失業率に対処すべく、米連邦政府は現金給付を開始している。なかには賃金より高い失業手当が給付されるケースもある。これはラディカルな実験だ。「(景気)刺激」と呼ばれているが、それは不正確だ。国民が「経済的監禁」期間を乗り切るための人道支援計画であり、明らかにUBI的な発想に基づいているのだから。
対照的に、ヨーロッパ諸国の多くは賃金を保証して、経済を「凍結」し、安全に仕事再開できるようになったら「解凍」しようとしている。

だが、米国内の最近の推定によると、パンデミックによるレイオフ10人ごとに新雇用は3人、さらに、今回の新たなレイオフのうち42%が「一時」解雇ではなくなるだろうというのだ。(たとえば、パンデミック後のアメリカで、ウェイターのニーズは減るだろう。)

そうなると、アメリカのベーシックインカム的戦略が、ヨーロッパのやり方より優れたものになる可能性がある。世界は急速に変わりつつあり、労働力はそれに応じて再配置される必要があるからだ。

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最終更新:5/18(月) 20:17
クーリエ・ジャポン

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