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感染症による死亡から一変…日本人の「新たな死因」の話:昭和

5/24(日) 9:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

「元号」という日本独自の文化が続くなか、昭和時代は、期間の長さで第1位を誇っています。もちろん、64年もの歳月の間には、様々な変化がありました。令和の世になって早一年。当時の様相を、子どもたちに伝えられますか? 本記事では、内科医である奥田昌子氏の書籍『日本人の病気と食の歴史』(KKベストセラーズ)より一部を抜粋し、「昭和時代の食文化」に焦点を当て、解説していきます。

脳出血による死亡…60年代には世界ワースト1位を記録

◆地道な調査で脳出血を封じ込めた

終戦後、感染症に代わって日本人の最大の死因になったのが脳出血でした。[図表]で確認しましょう。1950年代なかばから「脳血管疾患」が死因第1位の時代が続いています。

脳血管疾患は脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血などを合わせた呼び名で、脳卒中ともいいます。昔でいう中風ですね。

1950年代、60年代には、脳血管疾患全体の80~90パーセントを脳出血が占めていました。日本は脳出血による死亡率が世界でも高い時期があり、1960年代には世界ワースト1位を記録しています。なかでも東北地方には、成人の死因のほぼ半分が脳出血という地域もありました。

昭和27(1952)年、地道な調査を続けていた専門家が重要な報告を行いました。東北地方でも脳出血の少ない漁村に住む人は、新鮮な魚と海藻を多く食べ、飲酒量が少なく、雪がそれほど積もらないおかげで塩漬けしなくても食品が手に入り、冬も漁に出て体を動かしていたのです。脳出血を防ぐのに有効な生活習慣の発見でした。

魚についていうと、魚に含まれる動物性蛋白質のうち、とりわけ含硫(がんりゅう)アミノ酸といわれる成分がこの効果にかかわっていることが示されています。それに加えて、海藻から食物繊維を摂取し、アルコールと塩分の摂取をひかえて、しっかり運動することで、脳卒中の原因となる高血圧と動脈硬化を予防し、血管を強くできるわけです。


歴史を振り返ると、戦国武将の上杉謙信も脳卒中で死去しています。謙信は肉食を避け、魚もわずかしか食べず、酒を好み、塩分摂取量が多かったと伝えられています。病魔に倒れたのも、もっともなことでした。

これらの調査報告をふまえ、専門家らは現地に入って積極的に生活指導を行いました。すると、脳出血がとくに多かった地域で、わずか20年足らずのあいだに男性の脳卒中の発症率が3分の1近くにまで低下したのです。

この成功は、理論を柱とする欧米式の研究とは対照的に、観察と実用を重んじる日本的な研究方法の健在ぶりを示すものでした。

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最終更新:5/24(日) 9:00
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