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レスリング新ルールの光と影

2013/6/17(月) 8:17配信

THE PAGE

 国際新ルールを適用した初めてのレスリング日本代表選考会、「全日本選抜レスリング選手権大会」が6月15、16日と東京の代々木第二体育館で開催された。2020年五輪の中核競技からレスリングが除外されて以降、国際レスリング連盟は様々な改革を明らかにしてきた。そのうちのひとつがルールの変更である。

 9月のIOC総会で五輪の存続問題に結論が出されるが、ルール問題の変更の効果、その定着度などが、その是非に大きな影響を与えることは間違いない。

 新ルールが公になったのは5月18日。審判や選手への講習会も行えない慌ただしいスケジュールのなか、初めての日本代表クラスの選手による試合が終わった。ロンドン五輪で審判員もつとめた斎藤修審判長は、審判員たちがまだ慣れないと前置きしつつも「大きく改善されていると思う」と新ルールに好意的な評価を下している。

 新ルールがこれまでと違う点は、大きく以下の4点が挙げられる。

【1】試合時間の変更。2分3ピリオドのセット制から3分2ピリオド制へ。
【2】対戦相手と7ポイント差になった時点でテクニカルフォールとなり試合の勝敗が決まる。
【3】消極的なレスラーに対する罰則手順を早め、強化。
【4】0-0で試合時間が終了したとき、従来のようなくじ引き抽選による延長戦は行わない。

 全体的に、攻撃を高く評価する姿勢が強まった。たとえば、相手の背後の位置をとることで得られるバックポイントの数え方が変更されている。これまでは、タックルなど攻撃した末に獲得しても、後出しジャンケンのように相手が攻撃するのを待った末でも、バックポイントは同じ1ポイントと数えられてきた。

 ところが、新ルールでは攻撃を仕掛けたならば2ポイントを獲得できる。今までより得点機会が増え、さらに7ポイント差をつければ試合に勝利できるため、試合では積極的に攻め続ける選手が増えた。

 そして、まるでくじ引き選手権だと揶揄されてきた0-0同点時の抽選による延長戦が廃止された。守るだけでくじ引きに賭けるという勝ち方はあり得なくなった。実際に試合を戦った選手からも「お互いに技を出し合い、攻めあうこちらの方がやりやすい」「くじ引きではなく、レスリングそのもので勝負がつく」とおおむね好評だ。

 レスリングの試合といえば、今までは、マット中央で二人の選手がもみ合うだけで勝敗が決まる、といったネガティブな印象が強かった。だが、このルールならば悪印象が覆されるのではないだろうか。もっとも、新ルールには懸念材料もいくつかある。まず、攻撃する姿勢によって2ポイントと1ポイントに差別化されたバックポイントの判断基準だ。誰から見ても攻撃の形が整っていれば問題はない。だが、攻撃したといえるかどうか、何を基準に判断するのか。

 この種の判断に伴う問題は、消極的なレスラーへの罰則を与える際にも生じる。新ルールでは、消極的な姿勢に対する注意を従来より早く与え、回数を増やした。注意が重なると失点しやすく変更されたため、守りに徹するのは難しい。
 しかし、注意のタイミングこそ早くなったが、消極的な状態の基準は従来通り「指をつかむ」「逃げる」「後ろへ下がる」「脇をしめる」「守るだけ」などのように細かい規定がない。つまり、審判による裁量が大きく影響するのだ。

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最終更新:2016/2/4(木) 4:12
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