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ザックJがイタリアに善戦した理由

2013/6/20(木) 13:34配信

THE PAGE

 判官びいきだったのかもしれない。試合前のメンバー発表時から、この対戦でも当然のごとく黄色いユニフォームに身を包んだ地元の人々は、イタリア代表ではなく自分たちに開幕戦白星をプレゼントしてくれたチームに歓声を送った。だがその大音量は、試合が始まると決して義理ではなくなっていた。

 何も残らなかったブラジル戦から、力強く息を吹き返した。先発メンバーに帰ってきた前田遼一は、本田圭佑とともにボールを受けた相手DFへと猛烈にチェイシングをかける。次々と他の選手たちも連動し、高い位置でのボール奪取からゴールへ向かう。よそ行きをまとって開幕戦に臨んだサムライたちは、普段着に戻っていた。勢いを取り戻させたのは、前へと向き直したベクトルだ。

「今日は皆が前を向いてプレーできていた」

 岡崎慎司の言葉は、残した結果によって説得力を増す。GK川島永嗣からのFKを追い切って先制のPKを誘発した。その10分ほどのちの追加点も、鋭い寄せで名手アンドレア・ピルロからボールを奪い、速攻に移って手にしたCKから生まれた。

 ブラジル戦とは見違えるように前を向いてプレーできた背景には、相性もあったのだろう。ブラジルは、少人数のソリストによる即興の競演による局面打開を図る。その連鎖に対して守備から崩れた流れを、「(仲間を)1人にしないよう、危ないからリスクマネジメントをしすぎてうまくいっていなかった」と岡崎は振り返る。

 翻ってイタリアは、前線の核たるマリオ・バロテッリへボールを入れて、ブラジルよりも長い距離でのパスにより、チームの連係でゴールを狙う。現地ファンもお気に入りのストライカーには、ボールが渡ると歓声が湧く。だが、その怪物FWに対しては、今野泰幸が体格差を埋めるべく素早く粘り強い寄せを披露。怪童の苛立ちとともに、スタンドの日本への称賛のボルテージは上がっていく。

 勇気を持って開き直っての個人への信頼をベースに「気を使わないというか、みんなが自分の思うところにポジションを取っていた」と岡崎。ブラジル戦では最終ラインにへばりついていた長友佑都は、いつものごとく左の翼となり、幅を備えた日本の攻めは、中央を固めるイタリアを揺さぶり、引き伸ばす。スペースへ顔を出した本田と香川真司のタンデムが走る。かみ合った攻守の歯車が、日本を2点のリードへ導いた。

 だが、初戦と変わっていないものもあった。要注意であるはずの時間帯での失点である。選手たちが「消極的だった」と感じたアッズーリだったが、やはり世界に冠たるチームだった。2点を失うと前線から獰猛なまでのプレスを仕掛け、攻撃も厚みを増す。1点差としたCKは、中盤の底から攻め上がったピルロが奪ったものだった。折り返し地点まで、残り5分を切ってからのことだった。

 後半の立ち上がりも、開始7分で2点を失う。今度はミスによるものだ。献上したPKは気の毒な面もあるが、内田篤人がクリアしそこねてオウンゴールしてしまったクロスは、吉田麻也の守備の処理ミスが生んだものだった。

 「イタリアはあまり良くなかった」と選手たちは口をそろえる。ショッキングな形でリードを吐き出したが、久々のセットプレーからのゴールで3点目を奪って追いつくこともできた。だからこそ、悔しさも一層募る。

 まだ敗因を分析できないブラジル戦後、アルベルト・ザッケローニ監督は、「我々はもっと良いプレーができる」と繰り返していた。意味のないことだった。実践できないことには、しかも本番の舞台で実力を知らしめないことには、ただ言葉が空虚に響くだけだ。

 目標はワールドカップで、できれば内容を伴って、結果を残すこと。その本番で、もしもブラジルとイタリアと同居することになったなら、相当な悲劇というしかない。裏を返せば今回は、本番に酷似した舞台で、「世界の強豪相手の戦い方のやり直し」ができる稀有な機会だったのだ。

 来年も直面しうる、勝ち点を奪わねばグループステージを勝ち抜けないという「切迫した状況」も整っていた。

 バーを叩く不運もあった。日本のパス回しをスタンドは「オーレ」と盛り立て、大音量の「ジャパン」コールが屋根を振るわせるなど、観客も味方につけていた。だが、最後に笑ったのはアッズーリだった。あと4分のところで、日本は勝ち点1も捨ててしまった。

 もしも、この結果が1年後であったなら。岡崎は語る。「国際大会では、負けたら何も残らない」。記憶に残るチームになるのは、記録に残るよりもはるかに難しい。

 キャプテンマークを巻く長谷部誠はこう語った。

「日本のチームとして、組織として連動して、世界で勝っていくという信念がある。監督は、日本のサッカーを見せたい、日本の強みがある」と、熱く語ってくれた。

 そして、「苦しい試合でも勝ち切るのがイタリアの強さ」と彼我の差を表し、チームメイトと悔しさを共有した。「勇気とバランス」。アルベルト・ザッケローニは繰り返す。
(文責・杉山孝/フリーライター)

最終更新:2015/2/6(金) 4:47
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