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成長戦略で注目の指標GNIが抱える根本的矛盾

2013/6/21(金) 10:11配信

THE PAGE

 安倍首相は6月5日、都内で講演し成長戦略の第3弾を発表した。この中で首相は今後10年をメドに1人当たりの国民総所得(GNI)を現在の水準から150万円増やすという目標を掲げた。

 このところ日本ではGDP(国内総生産)に代わってGNIの指標を重視しようという動きが活発になってきている。GNIとは聞き慣れない用語だが、実は目新しい概念ではない。

 20年前までは、経済成長を示す指標としてGDP(国内総生産)ではなくGNP(国民総生産)が一般的に使われていたが、GNIは基本的にGNPと同じものである。つまり20年も前に使われなくなった指標に着目し、再びこれを活用しようとしているのだ。

 これには日本の国内市場が縮小し、GDPを使った指標では経済が縮小する一方に見えてしまうという切実な事情がある。確かにGNIを使った方が経済の現状をより把握しやすいという利点はあるが、GNIを推奨したいという政府の思惑はもう少し後ろ向きだ。

GNIとはGDPに海外で得た所得を加えたもの

 GNI(国民総所得)とは、日本人が国内外から得た所得の総額のことで、現在標準的となっているGDP(国内総生産)に、主に海外からの所得の受け取りを加えたものである。

 具体的には海外に設立した現地法人の配当や海外投資からの利益、海外で就労した人の所得などがGDPに加わることになる。現在日本は工場の海外移転が進み、海外で収益を上げるケースが増加している。GDPはあくまで日本国内で生まれた富を示すものであることから、工場の海外移転が進んでしまうと、日本の経済が成長しないように見えてしまう。GNIは海外で活動する日本企業から得た所得も計上できるので、より実態に近い評価ができる。

 国際収支の分野では、このことはかなり以前から当たり前のこととして受け止められている。日本はすでに慢性的な貿易赤字国だが、最終的な国の収支である経常収支はまだギリギリでプラスを保っている。それは海外に投資した資金から得られる投資収益が貿易の赤字をカバーしているからだ。

 この貿易の赤字をカバーしている投資収益が、GDPではカウントされないのである。海外で稼ぐという、これからの日本のビジネスモデルを考えた場合、GNIはひとつの有効な指標といえるだろう。ちなみに日本のGNIは一貫してGDPよりも多い状態が続いている(図1)。

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最終更新:2015/2/16(月) 4:48
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