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イチからわかるクロアチアのEU加盟

2013/7/1(月) 9:50配信

THE PAGE

加盟国は28カ国に

7月1日、バルカン半島に位置するクロアチアがEU(ヨーロッパ連合)に加盟します。EU加盟国は1993年の発足当時12カ国でしたが、段階的に数を増やし、クロアチアの加盟で28カ国になります。

EUにとって加盟国の増加は、関税がない共通市場の拡大につながります。新規加盟国にとっても、域内での物や人の移動が原則自由になることで、ヨーロッパ中心地にアクセスしやすくなります。アドリア海に面し、観光が主力産業のクロアチアにとって、EU加盟は観光客を呼び込みやすくするチャンスです。

加盟申請から10年

クロアチアがEUに加盟を申請したのは、2003年。正式加盟までに約10年かかったのです。EUに加盟するには、1993年に定められた「コペンハーゲン基準」を満たす必要があります。民主主義や人権を尊重すること、機能する市場経済があること、経済協力のために加盟国として義務を果たせること、の三つです。

このうち、クロアチアの加盟が難航したネックは、民主主義や人権の尊重でした。冷戦時代、クロアチアは東側陣営に属するユーゴスラビア連邦の一部でした。その名残で、1991年の独立宣言後も政府や裁判所で汚職が蔓延し、それらによる決定の公正さが疑われてきました。今年3月に欧州委員会が発表した最終報告書でも、クロアチアが加盟基準を満たすとした一方で、汚職防止などを引き続き監視する必要があると強調されています。

背景に旧ユーゴスラビア内戦

必ずしも「優等生」でないクロアチアの加盟申請をEUが最終的に受け入れた背景には、政治的な要因もあります。冷戦終結後、クロアチアを含むユーゴスラビア連邦の各共和国は連邦離脱と独立を相次いで宣言しましたが、これに反対する連邦主流派のセルビア共和国や各地のセルビア人勢力との間で、各地で内戦が発生。セルビア人はもともと民族的・宗教的にロシアと関係が深く、他の民族、共和国はこれから距離を置こうとしたのです。

ユーゴ内戦の影響は、難民の流出といった形で、隣接するイタリアなどに波及。結局、西側の軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)の介入と支援により、各共和国は独立を果たしましたが、激しい戦闘はヨーロッパ諸国にバルカン半島の安定の重要性を痛感させたのです。旧ユーゴスラビア連邦のうち、スロベニアは2004年にEU加盟を果たし、2007年には共通通貨ユーロも導入。セルビア、モンテネグロ、マケドニアも加盟交渉中です。

EUにとってリスクも

しかし、EU各国の世論は、クロアチア加盟を必ずしも歓迎してません。2009年のギリシャ財政危機を契機に、ユーロに対する信頼も低下。ギリシャ支援を主導してきたドイツなどでは、EUを支える自分たちの負担が大きすぎるという不満が噴出しています。EU加盟で先行したスロベニアがユーロ危機のあおりを受けるなか、クロアチアはユーロ導入を当面見送る姿勢ですが、所得水準の低い国にとってユーロ導入は大きな魅力。クロアチアに限らず、中小国のEU加盟とユーロ導入が進めば、第二のギリシャ危機が到来する懸念があるのです。

(国際政治学者・六辻彰二)

最終更新:2016/2/1(月) 4:27
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