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アベノミクス 賃金をめぐる「不都合な真実」/物価上昇との関係は?

THE PAGE 2013/7/23(火) 12:09配信

賃金が安い方がインフレに不満を持たない不思議

 少し意外なのが、実質賃金の上昇率が高いほどインフレの弊害を国民が意識しやすいという点である。実質賃金の上昇率が高いフランスや英国はインフレに対する国民の不満が大きく、実質賃金が低い米国やドイツは国民がインフレに対してあまり不満を持っていない。本来であれば、実質賃金が上昇すれば、数値上は生活が楽になっているはずだが、国民にはそう映らないようである。

 ブラジルはインフレの進行に合わせて最低賃金を引き上げる政策を積極的に行ってきた。実質賃金の上昇とGDPの成長は比例しブラジル国民は一時高成長を謳歌した。だが国民のインフレに対する不満は徐々に高まり、政府は価格統制で乗り切ろうとしたものの、最終的には大規模なデモにまで発展した。ブラジルは新興国なので単純に比較はできないが、実質賃金の引き上げが逆にインフレに対する不満を誘発した例として注目に値する(図3)。

 総合すると、実質賃金を低く抑えることが必ずしも経済成長と結びつくわけではないが、実質賃金の伸びが大きいとインフレの弊害が国民に意識されやすいということになるだろうか。

安倍政権は実質賃金についてどう考えているのか?

 日本は実質賃金がマイナスという数少ない国であり、成長率もマイナスである。図2のグラフを見ると、日本はデフレでかつ実質賃金も下がるという10年であったことがわかる。大企業の社員や公務員はそれほど賃金が下がっていない事を考えると、それ以外の労働者の賃金下落がすさまじかったことを暗示している。

 日本でこのような賃金の引き下げが可能だったのは、限りなく違法に近い雇用形態が横行していたからと考えられる。その意味で日本は最低賃金法は存在しているものの、実質的にはあまり機能していないといってよい。
 安倍政権が最低賃金の見直しに言及している理由は今のところ不明である。本当に実質賃金の引き上げを狙っているのか、それとも実質賃金は上昇しないと知りつつ、政治的ポーズを取っているだけなのか、あるいはそのどちらでもなく場当たり的な対応に終始しているのか、その答えはいずれ明らかになる。

(The Capital Tribune Japan)

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最終更新:2016/1/28(木) 4:44

THE PAGE