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内閣法制局って何?/集団的自衛権の行使容認にらむ長官人事

2013/8/2(金) 17:00配信

THE PAGE

 安倍政権が新しい内閣法制局長官に、集団的自衛権の行使に前向きとされる小松一郎駐仏大使を起用する方針を固めたことで、内閣法制局の存在がにわかにクローズアップされています。内閣法制局とはあまり聞き慣れない名称ですが、ここはどのような役割を持った役所なのでしょうか?

政府見解が憲法に抵触しないようチェック

 内閣法制局とは、政府が国会に法案を提出するにあたり憲法をはじめとする既存の法体系と矛盾がないかを審査するための役所です。また政府の公式見解などが憲法に抵触しないようにチェックするのも重要な仕事になります。内閣法制局のチェックは非常に厳しいことで有名で、ちょっとした矛盾やミスも許されません。このため法案作成を担当する霞ヶ関のキャリア官僚は、法制局のチェックを受ける際には夜も眠れないといわれています。

 通常、内閣法制局長官は内部昇格するのが慣例ですので、小松氏の長官起用は官邸主導による異例の人事といえます。このような人事をわざわざ実施するのは、安倍政権が秋の臨時国会において、従来の政府見解では憲法9条に違反するとしていた集団的自衛権の行使について、容認を表明する方向で準備を開始しているからです。

 現在の政府見解は、個別自衛権の行使は憲法9条で認められているものの、集団的自衛権(他国と共同で防衛する権利)の行使は禁止されているというものです。

 現在では自衛隊は当たり前のように存在していますが、かつては自衛隊の存在自体が憲法9条に違反するとして、旧社会党などを中心に激しい反対運動がありました。政府としては、米軍との共同作戦など集団的自衛権の行使は当面見送るとしても、自衛隊が独自に国土を防衛すること(個別自衛権の行使)については譲れない一線でした。

 これを理論武装するために、内閣法制局は様々な法律の知識や過去の政府答弁などを緻密に組み合わせ、現在の政府見解を作り上げました。これに矛盾することなく見直しを実施するためには内閣法制局の役割が重要になってくるというわけです。

三権分立を軽視との指摘も

 内閣法制局がこれほどの力を持っているのは、国会で成立する法案のほとんどが政府提出であり、本来の姿である議員立法がほとんど行われていないという日本独特の事情があります。三権分立を原則とする民主国家においては、本来、法案の作成は国会議員の仕事であり、法律が憲法違反かどうかを判断するのは裁判所の役割です。

 内閣法制局という行政府の一組織が、実質的に日本の憲法解釈や法案の審査機能を担っているという状況は、三権分立が軽視され、官僚主導政治となっている日本の未熟さの象徴であると指摘する声もあります。

(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)

最終更新:2015/2/18(水) 3:22
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