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円安のメリットは出ているの?/経常黒字で考える

2013/8/8(木) 15:28配信

THE PAGE

 アベノミクスの効果によって1ドル=100円前後の円安傾向が定着してきました。これまで円高は諸悪の根源などといわれていましたが、円安が進んだ今、果たしてそのメリットは享受できているのでしょうか?

輸入価格が上がるデメリットも

 円安でまず期待されるのは日本経済の柱といわれる製造業の輸出が回復することです。確かに金額ベースでの輸出は円安によって増加しています。しかし、日本は貿易立国ですので輸入も行っていますから、円安には輸入価格を上昇させるというマイナス面もあるわけです。

 最終的に貿易で得をしているのか損をしているのか見るには、国際収支の状況を見る必要があります。財務省が8月8日に発表した2013年上期(1月から6月)の国際収支では、貿易収支は4兆2382円の赤字となりました。日本は震災以降エネルギー不足が続いており、石油や天然ガスの輸入を増やしています。また日本企業の競争力が低下していることから、輸出の数量は減少が続いています。結果として、円安は貿易赤字を増やすことになってしまったようです。

 一方で、最終的な国のもうけを示す経常収支は3兆2114億円の黒字となっています。貿易赤字が増大しているのになぜ経常収支は黒字になるのでしょうか?それは海外の投資から得られる利子や配当などの投資収益が円安によって増大しているからです。投資は貿易とは異なり、原材料を輸入する必要がありませんから、円安はそのまま利益の拡大につながるわけです。

海外からの投資収益は増加へ

 ただ、このこと自体はあまり驚くようなことではありません。戦後の日本は製造業中心の経済だったため、製品の輸出によって国を支えていると多くの人がイメージしていますが、実際は異なります。貿易黒字によって積み上がった外貨による運用益は毎年増加してきており、すでに2005年には海外からの投資収益が貿易による利益を上回っているのです。最近では震災の影響による輸入増加と日本企業の競争力低下によって貿易赤字が定着、経常収支の黒字は投資による利益で維持しているという状況が続いています。

 経常収支の黒字が続く限り、海外への投資は増えていきますので、今後も投資収益は増加が見込まれます。ものづくりによる利益が投資による利益に置き換わっただけですので、国内の工場が減少するなどの変化はありますが、日本経済全体の構造は大きく変化しないでしょう。ただ円安が続けば、輸入物価の上昇でモノの値段が上がりやすくなります。景気が本格的に回復しない限り、生活実感としては苦しく感じる局面が多いかもしれません。


(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)

最終更新:2015/6/13(土) 4:30
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