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ダルビッシュに球数制限がない理由

2013/8/12(月) 15:17配信

THE PAGE

「K!、K!、K!、K!、K!、K!、K!、K!」

 2011年5月から、マリナーズの本拠地セイフコ・フィールドでフェリックス・ヘルナンデスが投げるとき、レフトポール際の一角「セクション150」は、そこに座るファンだけに配られる黄色のTシャツを着たファンで埋め尽くされ、ヘルナンデスが相手打者を2ストライクと追い込むと、三振をスコアブックに書き込む時に用いる“K”をファンが連呼するようになった。

 ヘルナンデスが期待に応えて三振を奪うと、「キングスコート」と呼ばれるそのエリアからは、地鳴りにも似た雄叫びが轟く。今やそうした光景はシアトルスポーツの名物で、客の入りが悪い試合でも、その一角だけは際立った賑わいを見せる。

 当初、マリナーズの監督らは眉をひそめた。2ストライクになるとヘルナンデスが明らかに力んで三振を取りにいったからだ。必然的に球数が増える傾向にあった。
 しかし、フロントサイドは、そうした懸念よりも集客を優先。監督も「止めてくれ」とまでは言えなかった。自分たちの給料が誰に支えられているかと言えば、「キングスコート」にいるような熱狂的なファンなのだ。

 丁寧に低め、低め。そしてコーナーをつきながら、相手打線を打たせて取るピッチングも面白い。しかし、それが例えば、外野席で見ていて分かるかどうか。逆に三振は分かりやすい。子供でも分かる。

 三振は客を呼び、金を生む。少なくとも「キングスコート」はそれを教えてくれた。

 あの光景を見て、「先を越された」と思っているチームがあるとしたらレンジャーズか。チームには今、大リーグでもっとも三振をとれるダルビッシュ有という投手がいる。幸い、毎年のようにプレイオフ争いをするようになったここ3~4年は集客に苦労していないが、状況が状況なら、同じようなプロモーションを仕掛けていたかもしれない。


 ただ、していることは同じかもしれない。

 今年5月、5日に試合で127球を投げたダルビッシュが、16日の登板でも130球を投じると、多くのメディアが否定的にそれを報じた。

「投げさせ過ぎじゃないのか?」

「後半持つのか?」

「今後も同じように起用するつもりか?」

 それはもちろん、ロン・ワシントン監督に向けられたものだが、とはいえその後も、ダルビッシュの球数が110球を越えることなど、当たり前になっている。
 四球に絡めた指摘はもっともだが、同時に三振の多さが、投球数の多さに繋がっていることも否定できない。とはいえレンジャーズは、「三振を取るのではなく、長いイニングを投げるために打たせて取れ」とは言わない。黙認している。
 それはダルビッシュの能力を制限することになるし、そもそも、相手打者が当てられないのだから仕方がない。が、加えて、興行的な面で三振がもたらす影響も彼らは良く理解しているのだろう。

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最終更新:2015/7/11(土) 4:24
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