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コーチを叱る楽天星野の組織マネジメント

2013/8/19(月) 10:17配信

THE PAGE

選手を叱らずコーチを叱る

 「このチームはコーチのチームですよ。優秀なスタッフに尽きる。ある意味、わしはなんもやってない」
 投手に関しては、阪神時代からの盟友、佐藤義投手コーチに全面的に任せている。星野監督が楽天監督に就任する前から佐藤義コーチは日ハムから楽天に引き抜かれているのだが、ダルビッシュが、信頼していた指導者で基本的に選手の長所を伸ばすスタイル。アメとムチを使い分け、投げさせる時には投げさせるが、ワンポイントアドバイスが鋭い。

 銀次、枡田をもう一皮剥けさせて、島内、岡島らを育てたのは田代打撃コーチだ。
 現役時代は、オバQの愛称で親しまれた通算278本塁打を誇るハマの長距離砲。言葉数の多いタイプではないが、バッティング理論と若手の育成には定評があり、横浜の2軍監督時代には、現巨人の村田らの若手を育てた。そしてアイデアマンでもある。先のロッテとの首位対決の3戦目は、アンダースローの渡辺俊介の先発が予定されていたが、その対策として試合前のバッティング練習では、あえて打撃投手にワンバウンドを投げさせていた。ワンバンドしたボールは、サブマリンのそれのように下から浮き上がってくる。バッターの目線や、タイミングを少しでも慣れさせておこうというアイデア練習。その試合では、アンダースロー攻略のキーマンとなるべき、左打者の島内が、先制の2点タイムリーで攻略に成功している。これも田代コーチの戦略の勝利だ。

 星野監督は選手を叱らない。中日ドラゴンズ時代は、鉄拳で有名となったが、今では、そんなことはしない。前回、私は、「星野がマー君を説教した日」という原稿をTHE PAGEに書いたが、そういう選手を直接、叱りつける場面は、最近では珍しいケース。外国人選手も含めてコミュニケーションは、密にとっているが、叱ることはない。星野が叱りつけるのは、実は、コーチに対してなのだ。
 「コーチにはガミガミやっている。思い切り叱りつけることもしょっちゅうよ」
 特に中日時代からの教え子、仁村チーフコーチは叱られ役だ。選手も当然、コーチが星野監督の怒られているシーンを目にする。

 それは、直接、自分が怒られるよりこたえるし、考えさせられることにもなる。
 星野独特の組織マネジメントである。社長が直接部下を叱るのではなく、まず管理職を叱り、意識を高める。星野監督も66歳。丸くなったという声もあるが、実は、そうではなく2003年に阪神を優勝に導いた時から、選手を叱らず、コーチを叱るという組織マネジメントで、チームを戦闘集団に変えた実績がある。金本知憲も、「監督に怒られたことは一度もありませんでした。コーチを怒鳴りつけ、コーチが僕らにそれをフォローしてくれるのです」というようなことを言っていた。

 盟友とも言える田淵幸一氏を、昨年オフにスタッフから外した。これに関してはフロントサイドからの外圧もあって断腸の思いだったのかもしれないが、星野はフロントに掛け合って、その後のフォローだけはちゃんとした上で受け入れた。
 「チームは動かすのは監督ではなくスタッフ」というマネジメント哲学があるゆえ、内外に批判のあった田淵氏をあえて外したのである。
 これまで中日、阪神と通じて星野野球のすべてを司っていた参謀、島野育夫氏が他界後、楽天で、初年度に勝てなかった際、参謀不在が指摘されてきた。だが、星野はスタッフに厳しく接し、時には、血の入れ替えを断行しながら3年目にして最強のスタッフを作りあげたのである。
(文責・駒沢悟/フリーライター、元スポーツ報知広島番記者)

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最終更新:2018/10/6(土) 22:07
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