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防衛費増には防衛産業「救済」の一面も/米軍縮で日本にもシワ寄せ

2013/8/20(火) 10:21配信

THE PAGE

 防衛省は2014年度予算編成の概算要求において、前年度比2.9%増となる約4兆8900億円を要求する方針を固めたと報じられました。2013年度予算でも400億円の増額となっていますから、最終的に増額が認められれば2年連続の予算増額となります。緊縮財政への要求が厳しい中、防衛費の増額が例外的に認められてきたのは、近年、日本の脅威となっている中国の軍事力に対抗するためです。しかし、防衛費が増額されるのは単純にそれだけが理由ではありません。全世界的な防衛産業をめぐる複雑な事情が大きく絡んでいるのです。

今後10年で50兆円近く削減

 現在、世界の防衛産業は経営が苦しい状況にあります。その最大の原因は米国の軍備縮小です。米国はイラク戦争から撤退したことや財政再建を進めていることから、防衛費の対GDP比を急激に縮小する方針を掲げています。2012年度には4.3%あった防衛費の対GDP比は、2020年度には2.6%にまで低下します。今後10年間で50兆円近くもの軍事費が削減されてしまうのです。

 この予算削減が防衛産業に与えるインパクトは大きく、防衛産業各社は、米国以外の国に対して兵器を売り込むことに必死になっています。米国政府の購入に依存する体質は欧州の防衛産業も同じで、各社とも生き残りをかけて激しい受注合戦を繰り広げているのです。

 この動きは日本の防衛費にも影響を与えています。防衛省は時期主力戦闘機として米ロッキード・マーティン社製F35の採用を決めましたが、これには米国側からの強い要望があったといわれています。F35の開発経費は予算を大幅に超過しており、ロッキード・マーティン社は日本など諸外国に積極的に販売しないと開発費を回収できない状態といわれています。

一種の「公共事業」

 このシワ寄せは日本の防衛産業にも及んできます。兵器購入の余力がない防衛省は、とうとう三菱重工など日本メーカーへの軍用機の発注を停止してしまいました。次の開発計画は現在白紙のままで、同社の生産ラインは止まった状態にあります。何としても防衛費を増額したいという台所事情があるわけです。

 政府では、日本の防衛産業の苦境を打開するため、日本メーカーがF35の部品製造と輸出を実施できるよう武器輸出三原則を緩和する方針です。F35の部品以外にも、輸送機や飛行艇などの輸出や関連施設運営の請負などが検討されている模様です。

 政府は兵器輸出を成長戦略の一環と位置付け、強化していく方針ですが、先にも述べたように、防衛産業の苦境は各国共通の課題となっています。競合も多く輸出強化はそれほど簡単なことではありません。防衛費増額は一種の公共事業のような側面も持ち合わせているのです。


(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)

最終更新:2015/11/25(水) 4:50
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