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なぜ自由貿易を進めた方がいいのか / TPP参加問題と「比較優位説」

THE PAGE 2013/8/24(土) 15:22配信

8月22日からブルネイでTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の交渉が進められています。日本のTPP交渉団は「聖域」とするコメや牛肉・豚肉など重要5品目を中心に他国の出方を伺いながら、正念場の交渉に臨んでいます。

 そもそも、なぜ貿易の自由化を進めなければならないのでしょうか。また、問題の本質はどこにあるのでしょうか。自由貿易論のもととなっている新古典派の経済理論「比較優位説」をもとに考えてみましょう。

 「比較優位説」とは、わかりやすく言えば、次のようなことです。ここに広告制作者、営業マン、総務経理担当者の3人から成る広告会社があると仮定します。この3人は器用でどの仕事もこなせますが、それでも自分の専門が一番得意です。この会社の場合、3人がすべての業務を3分の1ずつこなすよりも、それぞれが優位性を持つ仕事に専念する、つまり広告制作者は広告制作に、営業マンは営業に、総務経理担当者は総務と経理に専念した方が、会社全体の業績は上がります。

 国の産業についても同様で、比較して優位にある産業に特化し、比較して劣位にある産業については他国から品物を輸入し合うようにした方が、貿易にかかわる国々の富の総和は増えます。その分、お互いに恩恵を受けることができると考えられます。

「比較優位説」はウソ?

このような「比較優位説」は18世紀末から19世紀初めにかけて活躍したイギリスの経済学者リカードによって唱えられ、イギリス帝国主義のイデオロギーとなりました。しかし、イギリスが他国に自由貿易を求めていった結果は、歴史が教える通りです。たとえばポルトガルの場合、小麦とブドウ酒ではブドウ酒の方に比較優位性があったため、「ポルトガルはイギリスから小麦を輸入し、イギリスはポルトガルからブドウ酒を輸入するようにすればお互いに得をする」と説明されて、自由貿易に踏み切りました。その結果、イギリスの工業製品が大量に入ってきて黎明期のポルトガル工業は壊滅し、哀れにもイギリスの植民地とされてしまいました。

 一方、アメリカは関税障壁を高めて、まだ十分な競争力を持っていなかった自国の工業を守りました。1812年、米英戦争が始まるとアメリカとイギリスの貿易は途絶し、それをきっかけにアメリカ工業は大きく成長していきます。

 では、自由貿易は弱い国の産業を破壊する「悪魔の選択」なのかと言えば、そうとは言えません。「自由貿易がお互いの利益になる」という定理そのものは、まちがってはいないのです。ただし、「適用の仕方を誤ると、国を滅ぼす」という点には、十分に注意を払う必要があります。

 なぜ、このようなことが起こるのかと言えば、それぞれの国が抱える異なった現実を無視し、高度に抽象的な条件の上で物事を考えているからです。ですから「理論は正しく、現実には適合しない」という事態になるのです。そこで重要になるのが、交渉です。

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最終更新:2016/1/22(金) 4:37

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