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タクシー台数規制問題の盲点――競争激化の背景に「歩合給」

2013/8/26(月) 10:30配信

THE PAGE

 自民、公明、民主の3党がタクシーの台数制限を義務付ける法案の提出に合意したことで、タクシー業界は今後規制が強化される見込みとなりました。タクシーは小泉政権時代、規制緩和の象徴とされ、自由化によって台数が10%近く増加しました。これが競争の激化を生み運転手の待遇を著しく低下させたといわれています。しかし、タクシー業界はもう少し複雑な事情を抱えており、規制緩和について単純に賛成か反対かだけで論じることが難しいという現状があります。

 タクシー運転手は他の一般的な業界と異なり、歩合給の割合が極めて高い特殊な賃金体系になっています。タクシーの運転手はただ運転しているだけでは生活できるような給料を稼ぐことはできません。お客さんを乗せてはじめてまともな給料になります。

 運転手の努力によってある程度、お客さんの数を増やすことは可能ですが、タクシーは路上を走ってお客さんに拾ってもらうので、多くのお客さんを乗せられるかは「運」に左右される部分も大きいのです。つまり、本人の努力とはあまり関係のない部分で、業績連動給を強いられているというのが実態というわけです。

 もしファストフード店の事業者が店員に対して、お店全体の客の入りが悪いからといって今月の給料は半分にすると宣言したら、おそらくブラック企業だと大問題になるでしょう。しかしタクシー業界の一部ではそれに近いことが行われているのです。

客が減れば運転手の給料を下げるだけ

 すると、どのようなことが起こるでしょうか?タクシーの事業者はお客さんがあまり乗らない場合には、運転手の給料を下げればよいだけなので、台数を絞ってサービスを向上させるといった企業努力をしなくなります。さらに客の数が少なくなって、経費を捻出するのが難しくなってくるまで、その状態は放置されることになるでしょう。

 ここにきて台数を制限するという話になっているのは、運転手の賃下げが限界に来て、事業者が利益を出せなくなっているという背景が大きいと考えられるのです。

 もしタクシー会社が、歩合給ではなく、時間給で運転手に給料を払い、事業リスクについては運転手ではなく事業者が負うという、世間ではごく当たり前の業界慣行になれば、そもそも規制緩和が行われていてもこれほど台数が増えなかった可能性があるのです。

 タクシー運転手の歩合給は、高度成長期には運転手の生活向上に大きく貢献しました。黙っていてもお客さんがたくさん乗車し、高い給料をもらうことができたからです。しかし過度に歩合に依存した賃金体系は、現在のようなニーズが飽和した社会情勢にはあまり合っていません。

 規制緩和で台数が増えすぎて困るという状況以前に、業界慣行そのものに台数を無制限に増やしてしまう土壌が存在しているのです。規制緩和の是非を議論する場合には、こうした部分も含めた総合的な議論が必要です。


(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/2/8(月) 4:03
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