ここから本文です

GDP上方修正 景気は「加速度」的に良くなるのか?

2013/9/9(月) 16:38配信

THE PAGE

「加速度原理」が経済効果を増幅

 ここに自動車会社があるとします。この会社は100万円の車を年に1000万台生産しています。年間売り上げは10億円です。工場には年に100万台の生産が可能な生産ラインが10本あります。生産ラインの建造費用は1本5000万円で、寿命は10年です。1年に1本が寿命で使えなくなるので、1本を再建造します。ここ何年かは景気も安定し、常に10本の生産ラインが並び、10億円から5000万円を引いた9億5000万円の売上が続いています。

 ところが2年目の年、輸出が増えたため、生産ラインを1本増やして、毎年1100万台生産することにしました。設備投資にお金がかかっても、それは資産となりますし、売上が上がるのですから、自動車会社としてはよいことです。

 大喜びなのは、自動車会社からの注文で生産ラインをつくっている会社です。毎年、生産ライン1本を受注して5000万円の売上だったのが、いつもの1本に新規の1本が加わり、いきなり2倍の1億円となったのですから。

 この生産ラインをつくっている会社に部品を収めている会社も、その部品会社にもっと小さな部品を収めている会社も売上を伸ばします。このような経済効果は加速度的に勢いがついて波及していくため、「加速度原理」と呼ばれています。景気がよくなるときは、国全体で「加速度原理」や前ページで解説した「乗数効果」が働いて、よい循環に乗っているのです。

このあとが怖い「逆加速度原理」

 アベノミクスは人々の心を前向きに変えて、経済の車輪を動き出させることに成功したと言えるでしょう。もちろん、困難もあります。たとえば、現代は人々がほしいものを一通り持っている成熟社会ですから、ものがない時代ほど爆発的に消費が伸びていくことはないでしょう。中小企業で正社員の採用が目に見えて増えるまでには、2~3年かかるかもしれません。また、ボーナスはともかく、基本給は上がらないかもしれません。それでも、ゆっくりと消費が増え、投資が増え、雇用が増え、景気が回復していくことが予想されます。

 さて、自動車会社は3年目、4年目、5年目と、毎年生産ラインを1本増やして、100万台ずつ増産していきました。しかし、6年目には頭打ちとなり、それ以上の増産はしませんでした。とは言え、十分に儲かっているので問題はありません。しかし、生産ラインの製造を請け負う会社はパニックになりました。自動車会社からの注文が、2本から1本に減ったからです。その影響は部品メーカーにも波及していきました。景気が陰って、自動車会社では7年目には100万台の減産です。生産ラインを1本減らすことにしましたが、減価償却する1本をあてればいいので、新規に設置はしません。生産ラインをつくる会社では受注が0となったので社員を全員リストラし、その下請けの部品会社の中には倒産する会社も出始めました。

 この場合のポイントは、「景気が維持されるには今までと同じ状態を保つだけでは不十分であり、今までと同じペースで消費や投資が伸びていく必要がある」という点です。成長が衰えると加速度原理は一転して逆方向へ向かいます。これが恐怖の「逆加速度原理」です。バブル崩壊も、「逆加速度原理」で説明できます。

 安倍政権は、現在、デフレから抜け出すためのリフレーション政策に取り組んでいます。リフレーションがまだ成功しないうちに、その先の話をしては鬼が笑うかも知れませんが、成功後は「逆加速度原理」が働いて不景気になるのを防ぐための調整として、ディスリフレーション政策を実施していくことも求められてくるでしょう。

(広沢大之助・社会科編集者)

2/2ページ

最終更新:2018/10/6(土) 22:02
THE PAGE

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事